太田光+NHK「探検バクモン」取材班『爆笑問題と考えるいじめという怪物』

爆笑問題と考えるいじめという怪物 (集英社新書)

爆笑問題と考えるいじめという怪物 (集英社新書)

「探検バクモン」というNHK番組の資料を基にした書籍。
爆笑問題太田光は、いじめっ子としての子供時代と、いじめられっ子ではないものの周囲とのコミュニケーションを拒否して友達が一人もいない3年間を過ごした高校時代を経験している。そして自分(爆笑問題)のお笑いを「いじめである」と自認している。太田の文章に加え、相方の田中や、尾木先生、ROLLY、はるかぜちゃん、志茂田景樹などを交えた様々なメンバーで対談を行っている。また本書ではいじめによる不登校の子供の受け皿として、東京シューレ葛飾中学校という学校が紹介されている。長年フリースクールを運営してきたNPO法人東京シューレ」が母体となって設立した私立中学校で、国の「構造改革特区」の制度を利用して、不登校を経験した子供に配慮した特別なカリキュラムを組んでいるそうだ。書籍内の対談では、彼らの声も紹介されており、なかなか面白い。

余談

教育問題(特にいじめ問題)のことを考えると、結局、かつて読んだ村上龍の『JMM VOL.8 教育における経済合理性 教育問題の新しい視点』『JMM VOL.9 少年犯罪と心理経済学 教育問題の新しい視点2』『「教育の崩壊」という嘘』の3冊に戻ってしまう。
JMM〈VOL.8〉教育における経済合理性―教育問題の新しい視点 JMM〈VOL.9〉―少年犯罪と心理経済学―教育問題の新しい視点(2) 「教育の崩壊」という嘘
特に『JMM VOL.9 少年犯罪と心理経済学 教育問題の新しい視点2』ではフリースクールの取材が載っており、この取材に対する村上龍のコメントは、俺の教育観・学校観に多大な影響をもたらしたと思う。なお、(中略)と、カッコ内の言葉は、俺が付け足したものである。

それ(村上龍が取材した3つのフリースクールに共通していること)はフリースクール内に「競争」というものがないことです。またどのフリースクールも家族的で、少人数のシェルターのような雰囲気もありました。わたしは最初、以下のような違和感を持ちました。
1:子どもは、家族的ではない大集団の中での民主的なルール・規律を学ぶべきではないのか。
2:子どもは、競争をモチベーションにするという訓練をどこかでやるべきではないのか。
わたしが理解できていなかったのは、フリースクールを訪れる子どもたちの中には生命の危機に瀕しているようなケースが多いということです。あのまま学校に通い続けていたら自殺していたかも知れない、という子どもが大勢いました。(中略)
わたしは、子どもは集団における競争を体験する必要があると思っていました。社会は大小さまざまな集団で構成されていて、多かれ少なかれ競争があるはずだと思っているからです。(中略)
しかし(中略)たとえば一千人という規模の集団における「自己の確認」と「競争心」がこの先本当に必要になるのかどうか、考え方を変えなくてはいけないのではないかと思うようになりました。今後も社会から競争がなくなることはないでしょう。しかし、競争は学校で学ぶものでしょうか。
もちろん子どもに最低限の社会的ルールを守ることを教えることは必須でしょう。しかし最低限の社会的ルールを守ることができない子どもたちは、どちらかと言えば既成の学校の中で育てられているような気もします。

この文章はこれまで何度もブログで引用しているが、競争の厳しさや規律を果たしてどこで学ぶべきかというのは、実に深い問いかけだと思う。