- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/11/16
- メディア: 文庫
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第7弾となっても相変わらず、小鳥遊練無と香具山紫子が「賑やかし」でしかなく、瀬在丸紅子も魅力に乏しく、女刑事の祖父江七夏に至っては読んでいて恥ずかしいほどに凡庸である。
ここから本書というかVシリーズ全体の設定だが、主人公の瀬在丸紅子はバツイチ・子持ちで、その元夫の林は刑事である。別れた原因は林の浮気なのだが、その浮気相手は女刑事の祖父江七夏であり、林の子供を祖父江七夏はシングルマザーとして産み育てている。しかし瀬在丸紅子は離婚してもなお林のことが大好きであり、愛人時代からずっと関係が続いている祖父江七夏も当然林のことが好きなので、二人は恋敵……という設定だ。「昼ドラか!」とタカトシ並に突っ込んでしまいそうなほどに凡庸さが際立つが、殺人事件を前にしても、この凡庸さに拍車がかかってしまう。
本作では、山奥で橋の落とされた研究所で事件が起こり、「たまたま」居合わせた瀬在丸紅子とその御一行が、「たまたま」橋の落とされるタイミングよりも前に事件現場に到達した祖父江七夏と一緒に事件と向き合うというアウトラインである。当然ながら橋どころか電話も通じない状況だったのだが、クライマックスに近くなって電話が復旧したので、女刑事の祖父江七夏が上司であり恋人でもある林に報告の電話を入れることになる。
「あの、早く、こちらへ来ていただけませんか?」自分の声がいつもよりも高くなっている。七夏はそれに気づき、次に、すぐ後ろで聞いている紅子を意識した。
「もう、数時間だ。これから、橋の仮工事を始める。順調にいけば、すぐに渡れるようになるらしい」
(略)
「そこに紅子、いや、瀬在丸さんがいるか?」
「どうしてですか?」
「いるんだな。替わってくれ」
「いえ、それは……、ちょっと難しいと思います」
「替われ。仕事だぞ」
「わかりました。では、朝まで、待機しています」
「待て、おい……」
七夏は受話器を戻そうとした。しかし、紅子の手が横からそれを掴んだ。
七夏は紅子を睨む。だが、紅子は受話器を彼女から奪い取った。
「ありがとう。祖父江さん」紅子は優しい声で言った。そんな明るい声が出せるなんて信じられない、と七夏は思う。紅子は微笑み、顔を傾けて、長い髪の下に両手で大切そうに持った受話器を添えた。
「もしもし、お電話替わりました。瀬在丸です」
七課は下を出してやった。
なんつーか、もう、キモい。現実の三角関係すらもう少しマシであろう。これまで読んだ限りでは、保呂草を軸にエピソードを展開した方がよっぽど面白いんだけどなあ。