野崎まど『know』

know (ハヤカワ文庫JA)

know (ハヤカワ文庫JA)

『SFが読みたい!2014年版』で紹介されていたSF。
超情報化対策として、人造の脳葉〈電子葉〉の移植が義務化された2081年の日本・京都を舞台に、情報化が(少なくとも2014年現在と比べて)極限まで進んだ社会を描いたSF小説
そんなに分量は多くなく、文体も読みやすいため、1日で読めるのだが……いやー、驚いた。
面白すぎる!
SF界隈では、あたかも「見てきた」かのようなリアリティで(一見すると突飛な)未来や宇宙の話を描写できる書き手を「幻視者」と形容することがあるが、野崎まどはまさしく幻視者と言って良い。私は序盤から中盤にかけて、ストーリーを楽しむ一方で、21世紀後半の情報化社会は確かにこんなイメージである「はず」なのだと識者に教わっているような気分になった。そしてクライマックス付近では、もはや書き手と読み手の垣根すら飛び越えて、ヴィジョンそのものを頭の中にぶち込まれているような感覚に陥った。本書で語られた未来は、もはや読物ではない。預言である。
これは極私的小説ランキングのベスト10に入りますね。ベスト5と言っても言い過ぎじゃないかも。