- 作者: ジョアン・マグレッタ,マイケル・ポーター(協力),櫻井祐子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/09/21
- メディア: 単行本
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ポーターの著者は、必ずしも誰もが一読して理解できるような内容や文体ではない。また書かれた時期によってポーターの主張は微妙に異なっているという話も聞く。そのような中、本書は実にわかりやすくポーターの主張を整理してくれている。著者の都合の良い解釈や、自分が主張したいことのためにポーターを援用していることもない。
書名の通り、本書そのものがポーターの主張をエッセンシャルにまとめたものなのだが、終章でさらに10のリストにまとめていたので、それを引用してみる。
- 最高を目指す競争は、一見正しいように見えるが、実は自己破壊的な競争方法である。
- 利益を生まない規模拡大や成長には、何の意味もない。競争の目的は市場シェアではなく、利益にある。
- 競争優位の目的は、ライバル企業を打ち負かすことではなく、顧客のために独自の価値を生み出すことにある。競争優位は必ず損益計算書に反映される。
- 戦略には特徴ある価値提案が絶対に欠かせない。だが戦略はマーケティングだけの問題ではない。特別に調整されたバリューチェーンがなくても実現できる価値提案は、戦略的に意味がない。
- あらゆる顧客を満足させようと思わないこと。一部の顧客を意図的に不満にさせるのが、優れた戦略の特徴である。
- 戦略は組織がやらないことをはっきり打ち出して、初めて意味を持つ。トレードオフは、競争優位を実現し持続させる、戦略のかすがいだ。
- 優れた実行の重要性を過信してもいけないし、甘く見てもいけない。実行それ自体は持続的な優位の源泉にはならないが、これに後れをとると、どんなにすばらしい戦略があっても卓越した業績をあげることはできない。
- 優れた戦略は、一つではなく多数の選択に立脚しており、さまざまな選択間の結びつきのうえに成り立っている。一つのコアコンピタンスが持続可能な競争優位を生み出すことはまずない。
- 不確実な状況下で柔軟性を保つのは得策のように思えても、何の主義主張も持たず、何のとりえもない組織になるのがオチだ。変わり過ぎることは、変わらなさすぎることと同様、致命傷になりかねない。
- 一つの戦略に徹するうえで、大胆な将来予測は必要ない。戦略に徹することで、イノベーション能力と混乱への対応力がかえって高まるのだ。
まとめよう。
ポーターは「戦略の本質は、何をやらないかを選択することだ」と言う。私もそう思う。磨き込んだ戦略はシンプルになり、他との違いが明確になる。ジョアン・マグレッタの書いた本書は、極めて戦略的な良書である。私は本書をこれから何度も読み返し、自家薬籠中の物とするだろう。