折川朋子『Entre la poire et le fromage 洋ナシとチーズの間』

大手全国紙12年勤務後、文筆業のため2013年に渡仏しているジャーナリストの方によるパリ在住エッセイ。あまり著者のプロフィールは知らないのだが、最近ブログを定期的にチェックするようになった方である。で、ブログを見ていたら、Kindleで本を出しているとのことで、読んでみた次第。

普段のブログよりも贅肉の少ない硬質な印象を受けたが、フラットな文体で、男性なのか女性なのか、はたまた若者なのか年寄りなのか、文章を読んでもなかなかすぐにはわからない。また(稀に著者の自意識がグワーッと強烈に顔を出すことがあるものの)基本的には何かをガンガン主張するような文章ではない。つまり極めて抑制された文章と言える。

私は文体上のこだわりや特徴が強すぎる書き手や、難解・饒舌な言い回しをもって良しとする書き手が基本的には好きではないので、この抑制された感じは凄く読んでいて心地良い。文体ではなく、コンテンツに集中できるから。実際のコンテンツも、パリの空気感が伝わってくる感じで、なかなか面白く、へーそうなんだと素直に思った。やはり日本の企業や病院のサービスは恵まれているんだねとか、パリでもスポーツクラブのオバサンは運動じゃなくてダベりに来ているんだねとか。著者のパリ在住についての決意というか覚悟みたいなみたいなものも、ところどころで伝わってくる(この時に、著者の自意識がグワーッと溢れ出て読者たる私にビンビン押し寄せてきます)。
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