山田詠美『ぼくは勉強ができない』

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

この本は一見して反道徳的な小説に思える。そして10代の終わり頃に、そう思って何度も読み返した。しかし30代も後半になり、約20年ぶりに本書を読み返して、気づいた。本書は決して反道徳的な本ではない。むしろ道徳的すぎる。一度この「一部の大人」が押し付ける道徳性を感じてしまったら、もう本書を素直には楽しめない。

しかし思春期の少年少女が自分たちの世界を広げるには、凄く良い本だと思う。本書は、できれば思春期、遅くとも大学に入る頃までには読んでおきたい本と言えるだろう。私も何とか大学に入る前に読めて良かったと思う。そして30代も後半になった今、本書を何度も読んだ10代の頃ほどには私の心を揺さぶらないことに、私は自信を持たなくてはならない。

Amazonのレビューにもあったが、これは「いずれ卒業しなくてはいけない本」なのだ。

これはそういう本である。