山田詠美『放課後の音符(キイノート)』

放課後の音符(キイノート) (新潮文庫)

放課後の音符(キイノート) (新潮文庫)

オリーブという雑誌に連載されていた、恋愛まみれのキラキラの女子高生たちの物語。おっさんに読ませて心から感動しろというのは正直なかなか難しいけれども、山田詠美の中では成功した小説に分類されるだろう。

さて、今「おっさんに読ませて心から感動しろというのは正直なかなか難しい」と書いたが、では今の女子中学生や女子高校生たちは本書を読んで、どう感じるのだろうか?

昔は、制服や女子高校生という身分は「足かせ」であり「大人による抑圧の象徴」だったのだが、そもそも昔と今では女子高校生という立場が全く違う。女子高校生という身分は今や「手放したくないステータス」であり、制服はその「特権の象徴」である。しかしながら、女子高校生というだけでチヤホヤされるその現実が「期間限定」であることも十分に理解している彼女たちは、放課後どころか休日にわざわざ制服を着て原宿に繰り出し、恩恵を最大限に享受しようとするわけである。かつて制服廃止の運動を経て私服になった高校があることなど、彼女たちには想像すらできないのではないだろうか?

女子高校生たちが「放課後」をモチーフとする本書を読んでどう感じるのか、聞いてみたい気もする。