鈴置高史『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』

「三面楚歌」にようやく気づいた韓国

「三面楚歌」にようやく気づいた韓国

日経ビジネスオンライン上に「早読み 深読み 朝鮮半島」のタイトルで連載した記事に加筆・修正して構成した、韓国の「離米追中」を描いたシリーズの第5冊目。

儒教では法治より徳治が優先される……と書くと聞こえは良い。しかし実態は、中国なら皇帝、韓国なら王、すなわち徳を持った方による政治の方が、法律による統治よりも正しいということを意味する。偉い人、目上の人の言うことが正しいのである。しかも韓国は「情理」を重んじると著者は言う。情理と書くとこれまた聞こえは良いが、要は論理よりも感情が優先されるということだ。それが典型的に表れたのが、「韓国地検による産経新聞支局長名誉毀損起訴事件」であり、「対馬仏像盗難事件」であり、「セウォル号転覆事故」である、と著者は述べる。

韓国地検による産経新聞支局長名誉毀損起訴事件 - Wikipedia

対馬仏像盗難事件 - Wikipedia

2014年韓国フェリー転覆事故 - Wikipedia

「韓国地検による産経新聞支局長名誉毀損起訴事件」と「対馬仏像盗難事件」は過去の感想でも取り上げたので繰り返さないが、「セウォル号転覆事故」も実に韓国らしい顛末を辿ったと言える。

セウォル号の沈没後、与野党・法曹界・被害者の遺家族の3者で真相調査委員会を立ち上げることが決まった。これは委員の人数比から見て遺家族の言い分が支配的になることが確実だったが、それでも遺家族の多くは納得しなかった。そして自分たちに捜査権と起訴権を与えよと言い出したのである。ここで専門的な議論に立ち入るつもりはないが、遺家族の主張は「被害者が加害者を裁く権利を与えよ」と言っていることに等しい。こうした流れに、著者は「分かりやすく言えば『人民裁判による復讐はまずい』ということです。それが法治国家の常識です」と述べているが、わたしもその通りだと思う。しかし韓国では、こうした遺家族の主張を左派系マスコミも野党も賛成した。しかも保守系紙で、捜査権などを与えることに明確に反対している朝鮮日報が世論調査を行ったところ、「捜査・起訴権を渡せ」という遺家族の意見に賛成する人が43.0%もいたのである(反対は47.3%)。左派系が世論調査を行ったら、賛成と反対の比率は逆転したかもしれない。

こうした事件を基に、著者は「韓国は法治を目指さない国だ」と喝破している。中国や韓国は儒教による徳治が法治に勝っており、わざわざ細かいルールで縛らなくても「教化」により、より良い方向に社会は向かっていくのだ……つまり韓国は、わたしたちが思っている以上に中国の文化・思想に染まっている国なのだ。

日本は、それを前提に動かなくてはならない。

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