三島由紀夫『仮面の告白』

仮面の告白 (新潮文庫)

仮面の告白 (新潮文庫)

三島由紀夫の最初の書き下ろし小説だそうだ。半自伝的な小説。

自衛隊駐屯地で割腹自殺をしたことで知られるように、三島由紀夫というと「右翼」「マッチョ」といったイメージを持つが、この小説から受けるイメージは、それらとは全く異なる。主人公は病弱で、ナヨナヨしていて、ナルシスティックで、そして女性に対して不能である。はっきり言えば、ホモである。筋肉質な男性には欲情するのに、女には何の感情も抱かない。そして主人公は、自分が女性に対して何の感情を抱いていないという自分の気持ちを偽るために、愛していない女性を誘惑し、愛を「演出」することで、欺瞞めいた児戯を続けていくのである。何とも後味の悪い小説だが、描写は非常に巧みである。三島由紀夫の文章は、ほんと明晰だなあ。