三菱商事株式会社『BUSINESS PRODUCERS 総合商社の、つぎへ』

BUSINESS PRODUCERS 総合商社の、つぎへ

BUSINESS PRODUCERS 総合商社の、つぎへ

商社が商社を再定義した本である。

三井物産も以前、『総合商社図鑑 未来をつくる仕事がここにある』という本を作ったのだが、どちらもビジュアル重視で感性に訴えかける本である。
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商社=問屋、右から左に流して利ざやを得る、というイメージが強いので、その先入観を取っ払うためにビジュアル重視なのだろう。

少し脱線すると、インターネットが発達して誰でも世界中の情報にアクセスできるようになった結果、こうした問屋的なビジネスは価値を失うという見方が、一昔前の主流派の考え方であった。わたしもご多分に漏れずそう思っていた節がある。しかし実は、この情報化社会においては「逆説的に」問屋としての機能はますます重要になっている、というのがわたしの見立てである。それは情報が少なすぎるからか? それとも情報にアクセスするのが難しいからか? どちらも否。情報が多すぎるのである。昔は、普通の人や会社では世界中の情報にアクセスすることが極めて困難であったから問屋は価値を出せた。今は、普通の人や会社では多すぎる情報を見分ける・仕分けることが極めて困難であるから問屋は価値を出せる。

その意味で、旧来的な商社の価値は未だに十分ある。

しかし本書は問屋としてではなくビジネスプロデューサーとしての商社の価値に側面を当てた本である。商社は今、総合商社と専門商社で物凄い断絶がある。ほとんどの専門商社は、旧来的な問屋的ビジネスモデルである。右から左に流して、大量購入によるコストメリットや物流上の保証により利ざやを得る問屋的なビジネスモデルだ。しかし大手4社ないし5社の総合商社は、総合商社により少しずつ濃淡があれど、問屋的なビジネスモデルでの売上の割合はせいぜい半分程度である。残りの半分は、本書のタイトルでもあるビジネスプロデューサー的な動き、あるいは投資銀行的な動きで金を稼いでいるのである。その辺の動きや狙いが、本書を読むとけっこうよくわかる。