企業予算制度研究会『日本企業の予算管理の実態』

日本企業の予算管理の実態

日本企業の予算管理の実態

10年ごとの調査を3回に渡って継続し、日本企業における予算管理の実態がどのようになっているのかを解き明かしてくれた本。調査結果もさることながら、この質問自体や、本の中でさらっと述べられていることが、自分にとってはかなり役に立った。

例えば、わたしは先日、クライアントから「予算委員会」の他社の位置づけや導入割合について質問されたのだが、正直わたしは他社の予算制度について何十社も見てきたほどのプロではないし、そこまでピンポイントの話ってなかなか管理会計の教科書には載っていない。でも本書を読むと、企業には予算委員会というものを設置している企業があるのだが、それらの大半は「意思決定」ではなく「諮問」を目的として設置されている、みたいなことがサラッと書かれていたりする。冷静に考えれば、予算というのは企業経営上の最も重要な事項のひとつであるから、わざわざ「予算委員会」みたいなものを設置してそこで意思決定をするまでもなく、その会社で最も重要な「経営会議」や「取締役会」といった会議体に予算案を持ち込んで意思決定(承認)すれば良いのだ。理屈ではそうなる。でも、実態を知らずに軽々しく答えることはできないので、「ああ予算委員会って多くの企業ではそういう位置づけなのね」という裏付けが取れて物凄く助かった。しかも、予算委員会の設置割合は20%程度で……みたいな調査結果まである。

他にも、中長期計画と単年度の事業計画の位置づけだとか、単年度の利益計画と予算の関係だとか、全社計画と部門計画の連動性だとか、わたしが気になっていることがけっこう調査事項に入っていて、興味のない方には非常にどうでも良い話なんだろうなと思いつつ、わたしはこれを半ばバイブル的に読みながら仕事をしていたのである(読み終えたのは今日ではなく、しばらく前である)。著者(企業予算制度研究会)や、管理会計の研究者を除けば、わたしは日本でもかなりこの本を熟読した人間のひとりになるのではないだろうか。