牧野成一『日本語を翻訳するということ 失われるもの、残るもの』

日本語を翻訳するということ - 失われるもの、残るもの (中公新書)

日本語を翻訳するということ - 失われるもの、残るもの (中公新書)

タイトルのとおり、日本語を他の言語に翻訳する時、きちんと残せるものもあれば、不可避に消えてしまうものもある。

著者はウチとソトという概念を用いた日本語・日本文化特有の思考形式にまで踏み込んで論考を展開している。

オノマトペ(擬音語・擬態語・擬声語)や韻・リズムといった音にかかる表現や、短歌や俳句の味わいは外国語に訳出すると消えやすいよね、といったわたしでもすぐ思いつく程度のものから、同じ言葉でもカタカナ表記とひらがな表記から受け取る文体をどう訳出するのかとか、主語の省略をどう考えるか、必ずしも複数形表記に厳密ではない(例:3頭の馬たちとは普通書かない)日本語においてあえて複数形表記をした場合のニュアンスをどう考えるか、受動態表現が非常に多い日本語の特性を踏まえて「態」についてどう考えるか等、多岐に渡る指摘がある。気づきが非常に多い本である。