冷泉彰彦『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』

アメリカは本当に「貧困大国」なのか?

アメリカは本当に「貧困大国」なのか?

アメリカの不平等・貧困問題を批判した書籍に対しての反論を試みたのが本書らしい。と言っても全編に渡って詳細に反論した本というよりは、結果の不平等にばかり着目しているその本に刺激を受けて、アメリカが少なくとも十分な機会平等を与えている国であること等を述べた本、ぐらいの位置づけになるだろう。

個人的には、奨学金に対するシビアな姿勢と、それを奨学金をしっかり貰って大学でしっかり勉強しようという姿勢は凄いと思った。

例えば、日本の奨学金は色々と制度疲労を起こしていて批判もされているが、そのことに大筋では賛同する。端的に言うと、返済が必要な奨学金は単なるローンだよねという点に同意する。しかしここには2つの論点が意図的に隠されていて、まず返済が不要な奨学金もあるわけで、学業成績と家庭事情次第では日本においてもそれを貰うことが可能である点、次に奨学金を貰おうが貰うまいが日本の大学生は昔も今も対して勉強しておらず、返済不要で金を渡すほど勉学に打ち込んでいる人間などごく僅かであるという点である。

アメリカではその辺がかなりクリアになっていて、まずわかりやすい特徴として、多くの高校生は「第一志望の大学に入らない」という点がある。ここでの第一志望というのは、自分が入れる最もレベルの高い大学のことを指す。アメリカは成績が一定の基準を下回ると奨学金が問答無用でストップされるため、第一志望の大学に無理やり入って並もしくは底辺の成績を残すようでは、奨学金の基準を貰えない。だから特別な理由がない限り、アメリカの大学生はこうした第一志望は外して、身の丈に合った第二志望・第三志望の大学でしっかりと成績を残して奨学金を貰って家計を助け、またインターンや学位で経歴を積み上げ、そして卒業後は複数回の転職を経て自分が本当にやりたい仕事を手に入れることになる。わたしは銃社会アメリカに住みたいとは思えないが、こうした機会の平等を強く支持する。