橋下徹『政権奪取論』

政権奪取論 強い野党の作り方 (朝日新書)

政権奪取論 強い野党の作り方 (朝日新書)

わたしは橋下徹のことが好きである。人間的にはどうか知らないが、少なくとも彼が維新でやろうとした大阪都構想は支持する。

さて、わたしは就職の際に東京に出て、もう15年近くになる。元々は広島で生まれ、中学から大阪育ちだ。広島が好きで、カープが好きで、関西が好きだ。京都は夏暑くて冬寒いけどそれでも好きだし、神戸は絶対いつか住みたいと思っている。もちろん大阪も何だかんだ好きで、特にわたしが住んでいた高槻市は最高に便利だと思っている。友達も多い。しかし、わたしが大阪に戻るアテはない。経済が東京に集中しすぎており、わたしのような経営コンサルタントは東京以外での活躍の機会は限られる。いや、もう少し書くと、大阪のクライアントが皆無というわけではない。京都の企業も稀にある。しかしその場合も、東京以外のクライアントは「東京から出張」という形にした方が、様々な面ではるかに効率的だというだけである。

大阪の人々は、東京に次いで全国2位の経済基盤を持っていると思っているかもしれないが、それは極めておめでたい勘違いだ。横浜を含む神奈川には随分前に抜かれたという記事を読んだことがあるし、もしかしたら名古屋にも抜かれているかもしれない。名古屋……どうだったか今調べる気はないが、地域経済の安定感ではトヨタの城下町の方が明らかに上だ。そして今後を含めたポテンシャルで言うなら、大阪は福岡にも負けるだろう。大阪は大阪なりの独自性をもっと強烈に発揮させていく必要がある。維新は大阪の既得権益を幾つもぶっ壊してきた実績があるので、選挙では勝つ。しかし都構想実現には至らない。なぜ都構想を反対するのか、本当に理解に苦しむ。

そんな中、本書は「政権奪取論」と大きく出た。政権どころか都構想も実現できていない維新の生みの親が何を言っているのかと思う人もいるかもしれない。しかし読んでみると、頷けることが多い。最も気になったのは、政治における組織力の考え方だ。確かに自民党の組織力は突出している。わたしは民主党の生き残り政党には一切期待していないが、それでも維新を含むどこかの政党が力をつけて自民党に匹敵する勢力にならなければならない、とした際、本書に書かれているような「組織力」の蓄積は必要不可欠なんだろうなと思う。