ふろむだ『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

分裂勘違い君劇場というブログを書いている有名ブロガーが書いた本。

www.furomuda.com

色々と心理学の概念を紹介したり、錯覚資産という著者独自の概念を持ち出したりしているが、一言で書くならば「ハロー効果」である。

ハロー効果とは、ある物事を評価する際に、その全体をフラットに評価するのではなく、一部の目立つ特徴に引きずられて全体の評価をしてしまうような現象や思考・行動特性のことを指す。例えば、売れっ子アイドルが自分のインスタグラムで紹介した化粧品は良いものに見えるし、大学教授がワイドショーでコメンテーターとして発言すると、本人の研究領域とは全く関係がないものであってもまともなコメントに聞こえるし、過去何度も犯罪を犯した人がその辺を歩いていると単に散歩しているだけでも不審行動に見えてしまうとか、そういうものをイメージしてもらいたい。もっとも、わたしなんかは、芸能人がインスタやTwitterで紹介した商品は大抵ステマ(ステルス・マーケティング)なのだろうと眉唾で聞いているし、ワイドショーのコメンテーターの発言も(デーブ・スペクターを除き)大体マスコミの犬か偽善者の発言だと思って眉唾で聞くようにしているのだが、実はこれも含めてハロー効果である。マイナスの先入観で話を聞いているのだから。本書の言葉で言えば、マイナス方向の錯覚資産とか、錯覚負債ということになるだろう。

さて、このハロー効果が何を意味するかというと、著者の言い分としては、「失敗は成功の母」ではなく「成功は成功の母」の方が正しい、という点に尽きる。成功することで、成功者としてのイメージがついてハロー効果が生まれて皆の評価も上がるし、次のチャンスも得やすくなるし、実力もつく。しかし最初に成功するかどうかは皆が思っているよりもずっと実力の占める割合は低く、むしろ運次第だから、最初の成功を掴むまでは広く浅く色々なことにベットし、成功したら、その領域について掛け金を上げるような動き方をせよ、というアドバイスが書かれている。

全体としては面白い読み物であるし、この「ハロー効果が重要だ」という点についても完全に同意する。一方、人生にそこまで致命的な影響を及ぼすかと問われると、そうでもないような気がする。このハロー効果はたやすく逆転し、錯覚資産が錯覚負債に変わることも頻繁に起こっているからだ。手のひらを返すようなバッシングがちょくちょく起こっていることを考えれば、わたしの言っていることは他の方にも想像できるのではないだろうか。