中村和彦『入門 組織開発』

組織開発という言葉や概念は、かなりふわっとしている。

だから本書のような組織開発の入門書が必要とされているし、これまでも色々な人が色々な解釈や定義を書いている。

しかし、まずはわたしなりの理解を書く。

ポイントとして、人材開発と組織開発を対置させるとわかりやすいと思う。

人材開発というと、結局「人」にアプローチする。研修やらワークショップやら。人事制度を変えたりとか。しかし会社の問題は、必ずしも「人」にアプローチするだけでは上手く行かないことが多い。仮に「人」に問題があるように見えても、それは現象面での話なのだ。真因は、個別の「人」ではないどこかにあることが多い。それを紐解くと、わたしは「社風」と呼ばれるものや、「関係性」と呼ばれるものであったりすると思う。そういうものにアプローチして組織を変えていこうとするアプローチが組織開発だと思う。

例えば、ノルマをマイルドにしても、ノルマ重視・顧客軽視の風潮が変わらない会社があったとする。その場合、一人ひとりの意識やスキルが変わらねば意味が無いよねと言って研修やワークショップを開いていくのが人材開発的なアプローチで、上司と部下の関係や、顧客重視の行動を阻害する仕組みに着目して解決策を考えていくのが組織開発的なアプローチ……極端に書くと、そういうことだと思う。

乱暴に書いてみたが、必ずしも人材開発と組織開発は全くの別物ではない。組織の構成要素のひとつに人がいるわけだから、組織開発の中に人材開発も包含されるのかもしれない。

だがイメージはこれで理解できたと思う。

ただ組織開発は、人材開発と比べて対象が複雑だし、ふわっとしているため、手法もカチッと確立したものではない。これまでに色々な企業が実践したことがふんわりと体系化されている感じ。

余談

余談というほどでもないが、個人的になるほどと思った記載を1点引用。

(社員の)外発的動機づけ・内発的動機づけと、主体性・受動性の関係は単純ではありません。
 たとえば、「営業部の社員が外発的動機づけを高めて仕事をする」といったケースでも、よい営業成績を達成するために主体的に行動するケースと、上司から高い評価を得る(または、上司から叱られない)ために受動的に行動する場合があります。

この辺は、よくよく考えを整理する必要があると思う。外発的動機づけを「お金」、内発的動機づけを「評価」や「社内コミュニケーションから生まれたヤル気」と勘違いしている人がいるが、これは言葉の定義に照らせば明らかなように、間違いである。内発的動機づけとはあくまでも、仕事そのものの面白さや仕事を通じた意義の理解など、自分の内側から出てくるものであると思う。他人の評価は結局外発的なものだ。