
- 作者:名和高司
- 発売日: 2018/07/12
- メディア: Kindle版
第一章〜第四章
コンサルの主戦場である「問題解決」の7ステップを整理。
- 問題を定義する
- 問題を構造化する
- 優先度をつける
- 分析方法を設定する
- 分析を実施する
- 発見内容を統合する
- 問題解決法を提言する
その上で、特に重要な最初の2ステップにフォーカスして以下の能力を解説。
- 問題解決力
- 課題設定力「仮説思考」
- 仮説構築力「論点思考」
- インパクト力「インパクト思考」
第五章〜第六章
著者は「フレーミング力」と呼んでいるが、要するにフレームワークについての解説。10年前「フレームワーク本」が流行ったが、わたしは定期的に「フレームワークを覚えるだけでは使いこなせたことにはならず、意味がない」という旨を言ってきた。理由は幾つかあるが、よくあるフレームワークそのものを使っても「So What?」になるケースが多く、フレームワークそのものから示唆を出すのではなく、あくまでも抜け漏れ防止だったり、ディスカッションを円滑にするための叩き台に過ぎないケースが多い、というのがわたしの考えである。
著者の豊富な経験からも似たような示唆を導出したようで、例えばPEST分析については「マクロ環境を整理するフレームワークとして(略)効果的」「ただし、そこから新しい洞察が生まれることはない。あくまで確認」と書いている。また同様の理由で、SWOT分析は「使ったことがない」、ファイブフォース分析も「ほとんど使わない」、バリューチェーンも「自社の活動に限定してとらえてはならない」と書いている。全く同意である。
一方、アンゾフの成長マトリクス(市場と商品を両軸にとり、それぞれを既存と新規に分ける2×2のマトリックス)やボスコンのPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント/市場成長率とマーケットシェアを両軸に取った2×2のマトリックス)は非常に使い勝手が良いと評価している。というか、2×2のマトリックスの縦軸と横軸をどう定義するかがポイントだと言っている。こちらも同意である。何も考えずに既成のフレームワークを持ってくるよりは、縦軸と横軸をどう整理すれば自分たちやクライアントの頭がクリアになるかに集中するのが良いと思う。
第七章
分析の切れ味について解説したパートだが、冒頭、やや気になる表現があった。
私がマッキンゼーにいた頃、あるとき、非常に優秀な新人が入ってきた。かれは、新卒だというのに、「この問題を、どう分析する?」とこちらが尋ねると、「名和さん、それは質問が間違っています。どういう答えを出したいか言ってください」とくる。「イエスとノー、どちらの答えがいいですか? どちらでも分析してあげます」と。すごいやつが着たものだと思ったものだ。つまり、先に仮設を示せ、と言ったわけだ。分析の本質をはなからつかんでいたといえる。
著者はこれを分析の前提となるファクト(事実)についての勘所を踏まえた優秀な振る舞いだと言いたいようだが、わたしの考えは違う。これは狭義のコンサルとしては優秀なのかもしれない。しかしわたしが目指すクライアントファーストのコンサルではないと思った。この新人が言っているのは、仮説ではなく、結論ありきでデータを都合よく取捨選択し、解釈しますと言っているに過ぎない。著者は「一番ずるいファクトのつくり方は、インタビューだ」と書いているが、わたしは著者の例示した新人のようなスタンスが、最もずるいファクトの作り方だとわたしは思う。
第八章
問題解決の最大のキモは、前述の7ステップの冒頭の2ステップである問題の定義と構造化にある。一方、終わりの2ステップであるFindingsの統合と提言も重要であるため、そこにフォーカスしたのが本章。
第九章〜第十二章
第八章までは基本技だったが、ここでは超一流コンサルのスゴ技から学ぼうというもの。アウト・オブ・ボックス、EQやJQ、右脳と左脳のジョイント力、真善美、システム思考、非線形思考、トレードオンなどなどが挙げられている。要するに要素分解して局所的に治療する、ロジカルシンキング偏重型のコンサルでは超一流にはなれないよ、というもの。
大前研一のエピソードが豊富なのが面白かった。
第十三章〜第十五章
コンサルを目指す人、コンサルを超える人、社会課題を解決したい人、それぞれに対して本書の内容を総括する形で方法論を整理したパート。