菊澤研宗『成功する日本企業には「共通の本質」がある 「ダイナミック・ケイパビリティ」の経営学』

経営学のビッグ・アイディア(大胆で革新的な考え)は現在、次の4つなのだそうだ。

  1. 野中郁次郎教授が展開した「ナレッジ・マネジメント」研究(企業がどのようにして新しい知識(ナレッジ)を創造し、いかにして生み出した知識を効率的に活用する(マネジメントする)のかをテーマとする研究)
  2. クレイトン・クリステンセン教授が展開した「イノベーションのジレンマ」研究(優良企業が陥りやすい失敗をいかにして解決するかをテーマとする研究)
  3. ヘンリー・チェスブロー教授が展開した「オープン・イノベーション」研究(社外の知識を可能なかぎり利用し、オープンに研究開発を展開する方法をテーマとする研究)
  4. デイビッド・ティース教授が展開している「ダイナミック・ケイパビリティ」研究

このうちダイナミック・ケイパビリティのみ、まだ日本では十分に知られていないが、この考え方は成功した日本企業の本質を特徴づけているものであるそうだ。

本題に入ると、まず企業のケイパビリティ(能力)には2つの能力がある。

  1. オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)
  2. ダイナミック・ケイパビリティ(変化対応的な自己変革能力)

ややわかりづらいが、ビジネス環境が安定しているときに企業内の資産や資源を効率的に扱う企業の通常能力が「オーディナリー・ケイパビリティ」と呼ばれる。一方、ビジネス環境が不安定なときに「企業が環境の変化を感知し、そこに新ビジネスの機会を見出し、そして既存の知識、人財、資産(一般的資産)およびオーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)を再構成・再配置・再編成する能力」が「ダイナミック・ケイパビリティ」なのだそうだ。

詳細は本書を読んでもらうとして、ひとつ感心したのが、章立てや各章の説明が非常に筋肉質で、言い回しにも無駄なところがなく、とてもわかりやすいことだ。