田中宏暁『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』

ランニングやジョギングの本は山のようにあるが、本書はかなり刺激を受けた。

著者はスロージョギング(スロージョグ)の提唱者にして信奉者で、とにかく「ニコニコペース」で走ることが重要だと説く。面白いのは、ニコニコペース自体がその人にとっての主観であることが強調されている点である。最初は時速3km、高齢者は時速2kmという下手をすれば歩くよりも遅い距離でスロージョグを始め、とにかくニコニコペースを守る。このニコニコペースというのは、乳酸が溜まり始めるか否かの境目と相関があるようで、しかも鍛えると、このニコニコペース≒乳酸が溜まり始めるペースは早くなっていく。ニコニコペースを維持して走り続けるうちに、だんだん体も痩せ、ニコニコペースが時速6km〜8kmという一般的なジョギングペースになるところまで行くと、もうフルマラソンを走れと説く。でもニコニコペースで走れば辛くないでしょうと。事実、著者は元々生活習慣病の予防と運動の関係についての研究者で、スポーツ選手ではないのだが、40代半ばで自分も走り始め、フルマラソンの自己ベストは50歳で2時間38分48秒である。驚異的としか言いようがない。

顎を引かなくても良い(苦しくて顎が出るのはそれが空気を効率的に体内に取り入れられる自然な体勢だから)、フォアフット着地、ニコニコペースのトレーニングだけで良い(強度の高いトレーニングは不要)、あとは痩せていくだけで2時間台まで余裕で到達できる(事実、著者は上記のように到達してしまった)などなど、わたしがこれまで聞いたことのある理論とはかなり違う。

スロージョグより早歩きの方が良いだろうと何となく思っていたが、色々と目からウロコの本である。

余談

とりあえず30分だけスポーツクラブでスロージョグしてみた。最初は時速3kmと書かれていたが、3kmだと遅すぎてバランスが取れなかったため、時速3.5km〜4kmでやってみたのだが、確かに続いたし、これまでの「有酸素運動は嫌だ!」という気持ちが起きなかった。

わたしは昔から有酸素運動が嫌だったし、大人になってから何度もチャレンジしては挫折した。そしてその理由について「全力を出さずに心拍数をコントロールするのが性に合わず、退屈で我慢できない」からだと思っていたし、周囲にもそう言っていた。しかしニコニコペースを守ってトレーニングすると、この「退屈で我慢できない」という気持ちが今のところ起こらなかったのである。

そこで自分なりに思い返してみたところ、昔やっていた有酸素運動は、もっと負荷が高いのである。有酸素運動と言っても少しでも鍛えたいという思いとか、あまり遅いと恥ずかしいんじゃないかという思いから、トレッドミルは時速6〜8kmで走っていたし、エアロバイクも時速25km〜30kmでやっていた。これ自体は別に大したスピードでは全然ないのだが、自分の体重を考えると、正直マッチしていなかったのだと思う。少なくともニコニコペースではなかった。控え目にやっているつもりなのに十分しんどくて、その思いを1時間とか続けるのが嫌だという感じだったのかなと思う。

スロージョグしながら、ネトフリ・アマプラで英語動画を見る(英語音声・日本語字幕 or 英語音声・英語字幕)ことにしようかな。