川原英司『Mobility 3.0 ディスラプターは誰だ?』

自動車業界を取り巻く変化として「CASE」という言葉があるそうだ。以下の4単語の頭文字である。

  • Connected(コネクティッド):データを駆使したサービスの拡大
  • Autonomous(自動運転):提供価値の変化
  • Shared/Service(シェア/サービス):圧倒的な顧客基盤を保有するサービス・プロバイダーの登場
  • Electric(電動):電気自動車(EV)の急速な普及

これらの背景として、まずテクノロジーの進化がある。そしてビジネスモデルの進化ないし変化。それはよくわかるのだが、最も重要な顧客の視点はどこにあるのだろう? 自動車の未来を語る時、もっと顧客の視点、顧客の立場でモノを語らなければならないと思う。顧客はそのサービスが必要だろうか? 選ぶのだろうか?

例えば、自動運転は、わたし個人の立場では圧倒的な「是」である。わたしは運転ができない。免許だけを持っているが、昔ながらの免許=身分証明証として取っただけで、広島・大阪・東京と都心部にしか住んでいないわたしにとって車の必要性はない。事実、免許を取ってから一度も運転をしたことがないというスーパーペーパードライバーにして、無事故無違反のスーパー優良ドライバーだ。そんなわたしにとって運転したいという欲求はゼロだし、車を持っていないことによる不便さも感じない。しかし車に乗っているだけで目的地に行けるなら、話は変わってくる。公共交通機関を使うよりも楽だ。タクシーより気楽である。家のソファで本を読んでいる感覚で移動できるのだから、金を出しても手に入れたい超贅沢なパーソナルスペースとなる。自動運転が普及すれば、自宅の「パパの部屋」をなくして、その代わりに車でくつろぐ男性が増えるかもしれない。若者は家をなくして車に住むなんてことがあるかも。

電気自動車は……どうだろう。何のメリットがあるのだろう。環境に優しい? わからないでもないが、結局エネルギーは必要なのだから、車で直接ガソリンを燃やすか、発電所で燃やすかの違いという気もする。そもそもガソリン車よりも安くて便利にならなければ、顧客は電気自動車を買うことはないだろう。

本書を読みながらつらつらと考えていたのだが、自動運転が普及すると、今のUber Eatsの配達やそれに近いこと(宅配便)を車にある程度任せることができる。また無人タクシーのようなことも可能ににある。車を持つことで、ちょっとしたお小遣い稼ぎが可能になるのである。一方、ライドシェアがどんどん進んでいるので、普通の人は車を持たなくなるかもしれない。

3〜5年後は「今と大して変わらない」という身も蓋もない未来予測になるが、10年後はどうなるだろう? けっこう気になる。