青嶋稔『リカーリング・シフト 製造業のビジネスモデル変革』

わたしはリカーリングという用語をあまり知らなかったのだが、リカーリングとは「繰り返される」「循環する」という意味であり、リカーリングビジネスとは製品を販売して終わりではなく、顧客との繋がりを強め、販売後も取引を継続できるビジネスモデルのことを指すそうだ。リカーリングモデルには「課金の仕方」と「提供価値」により、5つに分類できる。

  1. 定額モデル(サブスクリプション)
  2. IoT与信
  3. マネージドサービス
  4. 成果報酬型モデル
  5. 業界プラットフォーム型

ただしサブスクを初めとしてブームの様相すら呈しているリカーリングビジネスだが、成功するためにはいくつかの壁(難しさ)がある。

  • データ取得と知財の壁
    • 顧客のデータが取れない
    • 保守網などのインフラが弱い
    • 顧客に対するメリットを明確に提示できない
    • データ取得のためのセキュリティ基盤が弱い
    • 顧客からのデータ、AIによる学習済みモデルなどの分解能に乏しい
    • 知財とビジネスのつながりが弱い
  • 人財の壁
    • 人財の可視化がされていない
    • 必要となる人財の要件が明確にできない
    • 人財の育成が難しい
    • 外部からの獲得をしても活用ができない
    • 人事部門と事業部門との距離が遠い
  • ビジネスモデル構築の壁
    • 機器売りの成功体験の呪縛
    • 顧客に対する提供価値構築の難しさ
    • 代理店とのコンフリクト
    • 自前主義
  • 投資回収期間の壁

本書の前半ではリカーリングビジネスの累計や難しさについて整理し、後半ではそれを乗り越えるためのヒントについて整理するという構成だ。製造業ということに一応絞っているがどの業界においても参考になるとは思う。