西澤保彦『新装版 七回死んだ男』

主人公(男子高校生)は特殊能力者、というか荒唐無稽な能力者である。稀に、同じ1日(24時間)を10回繰り返すのである。その1日が「いつ」やってくるかはわからない。しかし、やってきた場合は、必ず10回、同じ24時間を繰り返す。そして10回目の24時間が「正」の24時間として次の1日に繋がっていくのである。と言っても、この現象が「いつ」やってくるかは本人にもわからないしコントロールも出来ないわけで、これまではこの特殊能力をそうそう上手く活用することはできなかった。しかし、たまたま祖父が殺されるという忌まわしき事件がこのループ中に起こり、主人公は何とかこの殺人事件を回避しようと目論む――すごくざっくり書くと、このようなアウトラインであろうか。

この作品の面白いところは、世界観・設定はブッ飛んだものとしか言えないが、この「ブッ飛んだ世界観・設定の中」ではまともなミステリをやろうとしていることである。ルール無用ではない。ブッ飛んだルールが追加されているだけなのだ。これはいわゆる叙述トリックとも違う。そのルールは読者に予め開示されているのだから。

ミステリの傑作のひとつだと聞いて読んでみたが、なるほど面白い。