宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』

『成瀬は天下を取りにいく』の続編。

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先日の感想では、成瀬シリーズを「日常系ミステリからミステリを抜いたような」と若干アレな感じで形容した。ただ日常系ミステリを好きな方はわかるとおり、日常系ミステリにおける日常要素は必ずしもおまけではなく、したがって「出涸らしのクソつまんねぇ内容だ」とか「唐揚げ弁当から唐揚げを除去した魅力ゼロの内容だ」などと貶める目的での表現でもない。そもそも売れている日常系ミステリの多くは、キャラや世界線や設定が魅力的であり、ミステリ要素がなくともついつい引き込まれるものが多い。例えば米澤穂信の古典部シリーズや小市民シリーズは、ミステリ要素自体が極めて巧妙に高校生の青春の1ページにおける葛藤の中に織り込まれており、彼ら/彼女らの様々な葛藤が読めるのであれば「謎」自体は別に無くとも結果的に多くの読者は楽しめるのではないだろうか。

で、続編も、良い意味で「日常系ミステリからミステリを抜いたような」作風だ。良い意味でキャラが立っており、前作からの積み重ねで主人公も脇役も魅力度が増している。そして主人公のロボットのような口調にもすっかり慣れ、このぶっきらぼうな感じに人間味すら感じてしまう。

次も読みたい。

けれどこの作風でどこまで行けるのかは、わたしにもよくわからない。「どこまで行けるのか」という点でわたしが気にしているのは、読者が飽きるという観点よりはむしろ作者側の話だ。物凄い挫折だとか、深々と刻まれたトラウマレベルの傷跡だとか、親友との立ち直れないほどの決裂だとかを描く感じは、現状ない。この「良い感じ」の作品を続けていくことになるだろう。しかしわたしは「毒にも薬にもならない感じ」を追求し続けていくのもなかなか辛い道のりだと思うのである。作風と作者の心理状態は必ずしも一致しない。ギャグ漫画を描いている漫画家は突き抜けすぎてストレスが凄いらしい。