しんめいP『自分とか、ないから。 教養としての東洋哲学』

哲学・現代思想・宗教・古典といった何となく小難しいイメージのあるものを軽妙な語り口で解説してくれるって本は、昔から一定以上の需要がある。パッと思いつくだけでも、『旧約聖書を知っていますか』や『ギリシャ神話を知っていますか』に代表される阿刀田高の「知っていますか」シリーズ、井沢元彦の『井沢元彦の世界宗教講座』などが思い浮かぶ。つってもアレか、世界宗教講座は軽妙ってほどではないかもしれない。しかし宗教音痴の日本人にとって端的かつ構造的に解説してくれており有益なのは確かだ。

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その他、哲学者がエッセイ調で哲学を語るものや、物語形式で歴史や哲学を解説したもの、漫画で解説しちゃうもの、1日1ページだのあらすじを5分で学べるだのと、似たコンセプトの本まで含めると枚挙に暇がないし、いつかガッツリ語りたいとも思うのだが、今日は本題ではないため止めておこう。重要なのは、昔から広く「教養」めいたもののハードルを下げて手軽に理解したいというニーズは昔からかなり高いということである。

で、本書である。先日『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』を知人におすすめされて買った際、よく売れており話題にもなっていた本書のことも気になり、合わせて買った次第である。

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しかし読んだ感想としては、気に入らない。

なんか説明が雑なのである。そして笑わせようとしているところが寒い。

後者は好みもあるしまあ良いかって感じなのだが、前者が気になって頭に入りづらい。

例えば、サラッと「役員とは役割を演じる人のことだ」云々と書かれているが、正直「は?」である。

ほんとかよと思ってググってみたが、会社法で取締役・会計参与・監査役を「役員」と呼ぶことは以前から知っていたが、なぜ彼らを「役員」と呼ぶかの記載は見当たらなかった。見当たらないが、一般的に考えると、役付(やくづき、役につくこと、特別な職務や地位につくこと、役職であること)という言葉があるように、役員は「役」または「役職」から来ているように思う。

もちろん本書は東洋哲学を解説した本であり、役員について解説した本ではない。しかし雑な説明をされると、その都度、色々と気になって読書に集中できないのである。こんな説明が複数箇所あり、その都度モヤモヤしたりネットでググったりする羽目になる。で、そんなことを繰り返すうちに、これ正しく解説してくれているのかなと思い始めて、解説の内容そのものをググって検証しながら進めるようになる。

全く集中できない。

この手のエッセイ調の解説本は、単に文体がくだけているだけでは不十分だ。超訳的な説明をしていても内容はガッツリ正しいんだよねという、書き手への信頼感が必要なのである。