石野雄一『ざっくり分かるファイナンス』は、ファイナンスの非専門家が最初に読むべき本として実によく考えられた本である!

以前に読んだときのエントリーは以下。ちゃんと書いてないな(笑)

incubator.hatenablog.com

しばらく前の話になるが、新人から「まず最低限ファイナンスを知っている顔ができるために何の本から読めば良いですかね」と問われ、この姿勢は潔いなと逆に感心し、自分の記憶や本棚を探ってみた結果、ロングセラーでもある石野雄一『ざっくり分かるファイナンス』が最も相応しいのではないかという(仮の)結論に至った。そしてついでに再読してみた結果、これは名著であり、極私的に更に何度も繰り返して読むべき本だと思った次第。

わたし自身、ファイナンスの素人だが、それでも最低限ファイナンスについて知っていることを前提に仕事をしている。この道10年や20年のクライアントがわからない複雑な論点を即座に整理・解決してみせるのは無理でも、「あ、こいつと話しても駄目だな」と思われてはならないというのが基本素養だとすれば、その意味で本書は基本素養を身につけるために実によく考えられている本だと思う。

目次を引用してみよう。

はじめに
第1章 会計とファイナンスはどう違う?
第2章 ファイナンス、基本のキ
第3章 明日の1万円より今日の1万円〜お金の時間価値
第4章 会社の値段
第5章 投資の判断基準
第6章 お金の借り方・返し方
さいごに

わたしが良いなと思うのは「ファイナンス、基本のキ」が第1章ではなく第2章という点だ。

そもそも会計とファイナンスは「ファイナンス&アカウンティング(会計財務)」という感じで一緒くたに語られがちだ。中小企業では経理機能と財務機能も一緒になっていたりする。しかし(対象が「お金」という点で近しいところはあっても)両者の役割は明確に異なるはずである。そこを、(ファイナンスそのものの解説に入る前に)第1章の「会計とファイナンスはどう違う?」という章で明晰に解説してくれているため、読者は「ファイナンス」というものの立ち位置について迷わない。

また(ファイナンス、基本のキで説明して良いはずの)お金の時間価値を敢えて3章で独立させているのも良いと思う。ファイナンスの入門書を手に取ろうという人は、ファイナンスぐらい勉強するべかーという総花的な人間は別として、お金の時間価値(現在価値)のことをちゃんと知りたい人が多いのではないかと想像している。その意味で、この章が独立しているのは非常に使い勝手が良い。