齋藤勁吾『異世界サムライ』1〜3巻

主人公は女性だが、サムライである。全身全霊で戦い、戦いの中で死ぬことに強く憧れるサムライである。その憧れを現実にするため、「道場主の父親」の娘として結婚する安定を捨て、そのために顔に刀傷をつけ、決闘の末に父親を殺し(父親は主人公のサムライとしての決意に賛同していたので無慈悲な殺戮ではない)、そして関ヶ原の戦いに挑む。しかし合戦の冒頭、敵の攻撃を受けて気を失ってしまったことで死に損ねる。戦国時代が終わったことで、サムライとして生きて戦いの中で死ぬという目標が潰えて絶望する主人公だが、そこはテンプレ、仏様への祈りが通じ、主人公はドラゴンや魔物が跋扈する異世界に転生する――と、そういう世界線。

よくある異世界転生モノだが、類書と大きく異なるのは、テンプレ設定ではあるもののテンプレ展開になっていない点だ。

異世界は、魔法や魔物が存在するけれど、法の秩序が存在している。そして魔物という共通の敵に挑むため人間同士は協力し合うべきという発想なので、人間同士で殺し合うなど言語道断であるという倫理観を持つ。殺人などもってのほかである。一方、戦国時代から異世界転生した主人公は、人間は殺し合うのが普通で、当然これまでに信じられないほどの人間を殺しているし、何なら父親だって殺しているし、殺し合って死にたいという憧れすら持っている。

日本語で書かれた漫画なので読者は当然日本人が多く、主人公もサムライ側なので、なろう系の設定だけを聞くとサムライ側に感情移入しそうだが、それを全力で拒絶するのが本作である。根本となる倫理観が異なるから、素直に読むと、ブッ飛んだ主人公よりは、異世界の人間に感情移入するような気もする。

なかなか面白い。