笠原真樹『夢なし先生の進路指導』4巻

夢に向かって努力する/しようとする生徒を、「夢なし」と呼ばれる教師による悲観的な指導で我に返らせるという構図の漫画。

最初は新機軸で面白いと思ったが、今の印象は違う。ただの逆張りにしか見えず、薄っぺらくてつまらんな。

それに不快だ。ネットのルサンチマンを煮詰めたような酷い腐臭がする。

この作品がつまらないと思うのは、この主人公が夢という概念をすごく浅薄に捉えていることだ。夢イコール他人を不幸にする呪いで、「夢」を諦めたら「普通」で、その「普通」によって「幸せ」に辿り着けるというあまりにも単純な二元論。しかし「普通」の「レール」に乗ること自体がどれだけ大変なことか。そして仮に「普通」になれたところで、幸せや夢のヴィジョンは人それぞれなのだから、別に幸せになれるかどうかもわからない。そして幸せが良いことかどうかすらわからないのだ。

このような浅薄な人生論みたいなものを目にするたびに、わたしは哲学者・中島義道の言葉を思い出す。このブログでも何度も引用してきたが、わたしはこの言葉を糧にして生きてきた。豊穣で濃密な人生であれば、夢だの現実だのどうでも良いだろう。

私は、目指すべきは成功や幸せではなく、豊かな人生だと思います。たくさんの失敗や苦しみは、濃密な人生の重要な要素になるんですよ。

なお本作は次巻から過去回想編に入るようだが、この安易な過去回想編の挿入もまたベタで好きになれない。多分もう続きは買わないだろう。