浅野いにお『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』1巻

浅野いにおの最新刊。
3年前に宇宙人的なものが地球に侵攻し、大きな被害を受けた。しかしその後は積極的に世界を攻め滅ぼすことなく、とはいえ無害ということもなく、一般大衆は生ぬるい戦争状態というか不穏な状態に置かれている……という設定。
この手の設定の漫画・アニメはけっこうよく見かける気がする……というか、ピンポイントで設定や雰囲気が似ている漫画・アニメがあった気がするのだが、思い出せないなあ。その代わりの近いところで言えば、例えば『フリクリ』なんかは設定も雰囲気も近い。また山本直樹の漫画は(設定は違うんだけど)全体的にこういう意味不明な生殺し感がある。そして、不穏さはないけれど設定が似ている「侵略しない(侵略できてない)侵略漫画」というのはそれこそ山ほどあって、パッと思いつくだけでも『ケロロ軍曹』とか『友だち100人できるかな』とか。
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で、こういう類似作品が山ほどある中で本作がどうかというと、今のところサブカル臭満載&前衛アプローチ満載&パロディ満載で、実に浅野いにおらしいというか何と言うか。まだ評価は保留かなー。

浅野いにおについて

ここからはやや余談めいてしまうが、浅野いにおには、個人的には『素晴らしい世界』や『ソラニン』のような方向性で突き詰めてほしかった。サブカル臭はデビュー作以来浅野いにおの作品に通底するモードであるからしてどうしようもないというか、サブカル臭あってこその浅野いにおであるが、『素晴らしい世界』や『ソラニン』には前衛アプローチやパロディは見られなかった。作者ならではの美意識があるのか、時折ちょっとした小道具やセリフで「ハズし」を入れたり、ありふれたストーリーに気恥ずかしさを見せたりしながらも、原則的には「王道」とも言える青春モノを、やり切ってみせる。たとえるなら、変化球投手になろうか迷いつつもサイドスローで豪速球を投げ込む本格派投手である。
今は作者が伝えたいことや、問題だと思っていることを、前衛アプローチやパロディを通してしか表現できなくなっているように見える。『おやすみプンプン』では、主人公の造形が文字通り「落書き」だったが、落書きにする必要が本当にあったのか? おざなり君でも同様に意味不明なキャラデザにして「しりあがり寿の劣化コピーかよ!」と叫びたい気持ちになった。本作も『おやすみプンプン』や『おざなり君』ほどではないけれど、そういう面が見え隠れしている。
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