三浦建太郎『ベルセルク』4〜14巻

ベルセルク コミック 1-37巻セット (ジェッツコミックス)

ベルセルク コミック 1-37巻セット (ジェッツコミックス)

ベルセルク (13) (Jets comics (647))

ベルセルク (13) (Jets comics (647))

ベルセルク (4) (Jets comics (465)) ベルセルク (5) (Jets comics (497)) ベルセルク (6) (Jets comics (523)) ベルセルク (7) (Jets comics (542)) ベルセルク (8) (Jets comics (559)) ベルセルク (9) (Jets comics (572))
ベルセルク (10) (Jets comics (592)) ベルセルク (11) (Jets comics (609)) ベルセルク (12) (Jets comics (629)) ベルセルク (13) (Jets comics (647)) ベルセルク (14) (Jets comics (661))
1989年より連載されているダークファンタジーの最高峰。

  • 黒い剣士(1〜3巻)
  • 黄金時代(3〜14巻)←NOW!!
  • 断罪篇(14〜21巻)
    • ロスト・チルドレンの章
    • 縛鎖の章
    • 聖誕祭の章
  • 千年帝国の鷹(ミレニアム・ファルコン)篇(22〜35巻)
    • 聖魔戦記の章
    • 鷹都(ファルコニア)の章
  • 幻造世界(ファンタジア)篇(35巻〜)
    • 妖精島の章

3巻の後半からは「黄金時代」に突入する。
「黄金時代」では、序章(黒い剣士)から時を遡り、隻腕・隻眼で復讐の旅を続ける黒い剣士の誕生までが描かれる。具体的には、主人公ガッツの生い立ちから少年時代、鷹の団と呼ばれる伝説の傭兵団で過ごした青春時代、全ての因縁の始まりとなった「蝕」と呼ばれる魔の饗宴、そしてガッツが「ドラゴンころし」と呼ばれる鉄塊のような大剣を手にして復讐の旅に出るまでを描いている。
黄金時代というのは、実は人気的にも黄金時代というか、鷹の団でのガッツの生活や蝕が本作品の最高峰だという人も多い。しかし私は、本作の最高峰は「黄金時代」ではないと考える。
蝕で喪われたガッツの仲間たちの生き様、いや死に様は痛切だった。ガッツも心身共に傷つき、損なわれた。そして傷ついた体で、ガッツは憎悪で全身を塗り潰して立ち上がる。それが「黄金時代」のラストだ。
しかしガッツはその後、憎悪だけではくぐれないと思われた災禍をも、くぐり抜けるようになる。大切なものを守ることを誓い、そして共に進む仲間を、また見つけることになる。ガッツは、彼らを「仲間」だと感じる度に、死んでいった仲間と、怪物へと変わり果てた仲間への思いに身を焼かれる。そんなダブルバインドに身を挟まれながら、それでもなおガッツは、大切なものを守ることを選ぼうとし、新しい仲間と進むことを選ぶのだ。
あまりにも過酷で苛烈なプロットが、テーマに昇華し、その刃が読者に突き刺さる。
人間は、自らの黄金時代が喪われてもなお、残された大切なもののために足掻くことができるか?
人間は、憎悪よりも強く駆動するインセンティブを見つけることができるか?
「物語」というものは残酷である。ここまで美しい「黄金時代」が、鷹の団のメンバーの壮絶な死に様が、真のテーマを浮かび上がらせるための呼び水として描かれているのだ……。