石田スイ『東京喰種トーキョーグール:re』4巻

東京喰種トーキョーグール:re 4 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

東京喰種トーキョーグール:re 4 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

人間とほぼ同じ姿形・知能を持つが、人間を食べて生きる非人間の「喰種(グール)」と呼ばれる種族をモチーフとしたダーク・ファンタジー。

喰種と人間は「食う者」と「食われる者」の関係にあるが、知恵を持つ人間は一方的な食われる側で収まるわけもなく、さりとて喰種も単なる猛獣とは違い人間と同等の知恵を持っている。だから両者は長年抗争を繰り広げてきたが、人間側は現在、喰種対策局(CCG)と呼ばれる専門の行政機関を設置し、強力な戦闘力を持った喰種捜査官を多数抱えるまでになった。その結果、喰種は(快楽のための殺人を除けば)通常1ヶ月か2ヶ月に人間ひとり程度を殺せば十分に生きていけるのだが、喰種捜査官の中には「狩られる側であるはずの人間」が「狩る側であるはずの喰種」を単独で年間数百体も駆逐するという逆転現象も起きており、人間と喰種の双方が、引くに引けない危機感を持って抗争を激化させている……こんな世界観だろうか。

前作『東京喰種トーキョーグール』(タイトルに「:re」がつかないので通称「無印」と呼ばれる)では、喰種(グール)特有の臓器「赫包」を埋め込まれて「半喰種」となった金木研が主人公で、自分が「人間なのか」「喰種なのか」と揺れ動きながらストーリーは進展していった。

続編となる「:re」では、人間側と喰種側の双方が、喰種に対抗するために人間に赫包を埋め込む技術を(実験的でありながらも)確立しており、人間の心を持った半喰種を戦力として抱えた人間が、人間の心を失った半喰種を戦力として抱えた喰種と戦うようになっている。しかも「:re」の主人公・佐々木琲世(ハイセ)は、人間時代と半喰種時代の過去20年間の記憶を失った「無印」の主人公・金木研である。ハイセは自分が何者なのか前作以上にわからないまま、しかし人間として必死に生きようとするのだが、「:re」の登場人物を見渡すと、「人間」と「喰種」の境目が「無印」以上に曖昧になっている。アイデンティティの揺らぎを描いた物語として当代随一の傑作になりつつある。