- 作者: 桜井画門
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/11/06
- メディア: Kindle版
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この漫画は、主人公の位置づけがどんどん変わっていくのが面白い。私の中で便宜的に分けてみると、
- 第一幕:
- 元々ごく普通の人格を持ったごく普通の人間だったはずの主人公が、自身が亜人であることが判明したことで(亜人は通常、自分が亜人であることは「一度死ぬまで」知らない)、必死で逃げ回る。
- 第二幕:
- 主人公は(4巻の途中ぐらいまではごく普通の人間であるかのような偽装的な描写がなされていたが)実は人間らしいあたたかみのある感情・良心・正義感といったものを一切持っていないアンチヒーローだということが明らかになる。そして主人公は亜人という現実に苦しむわけでも、亜人として迫害されることに抵抗行動を示すわけでもなく、ただ自分が安全・平穏に生きられればそれで良いという道を選ぶ。
- 第三幕:
- 人間社会に対して破壊的な行動をとる亜人・佐藤の存在は、亜人に対する反感や規制を強め、自身が平穏に生きるためにはあまりに危険な存在だという判断から、少し前まで自身を「解剖」していた人間側と組んで、亜人・佐藤と戦う。
今は(極私的分類による)第三幕なのだが、とにかく亜人・佐藤の壊れっぷりが半端ないね。主人公は、人間らしいあたたかみのある感情・良心・正義感といったものを一切持っていないけれど、怒りや悔しさ・焦りのような感情はよく表出させている。一方、佐藤は「人間であった頃」から、感情そのものを持っておらず、小動物の殺戮を繰り返し、軍人となった後も、死と隣り合わせの戦闘のスリルだけが生きている実感を与えるというアブない奴だった。そんな佐藤が亜人化して死ななくなった今、彼は戦闘行為で「遊ぶ」ぐらいしか、やることがなくなっている……という更にアブない奴になっている。
続きが楽しみ。