めいびい『かつて神だった獣たちへ』3巻

かつて神だった獣たちへ(3) (講談社コミックス)

かつて神だった獣たちへ(3) (講談社コミックス)

戦争を終わらせるために異形の怪物(擬神兵)になる道を選んだ者たち、彼らはかつて「神」と畏怖された。しかし戦争が終わった今となっては単に「獣」と呼ばれ、忌み嫌われ、蔑まれている。主人公(ハンク)は擬神兵たちの部隊の元隊長で、ウェアウルフ(狼男)である。元隊長としての責務から、ヒトとしての心を失い問題を起こした元部下を殺して回っているという、もう何とも言えない哀しい世界観の物語。

……だったのだが、2巻のラストで元副隊長(ケイン)の吸血鬼が登場し、物語が大きく転換する。擬神兵である自分たちが死ぬことで戦争が本当に終わるのだと考えているハンクとは違い、ケインは、何故ここまで国のために働いた自分たち擬神兵が冷遇されねばならないのか、安易な和平ではなく戦争を続けるべきだったのだと考えるタイプである。そして2巻のラストで、ケインはハンクを暴走させ、ハンクは蒸気街「ホワイトチャーチ」の一画を壊滅させてしまう。

3巻は、その1年後が舞台である。ケインは擬神兵を率いてクーデターを起こし、自由国家・新パトリアを建国。一方、人間たちは擬神兵たちを明確に敵とみなし、擬神兵を討伐する舞台を創設する。そして世界は国家と国家、そして人間と擬神兵の戦いが始まろうとしている、キナ臭い世界観になっている。なお3巻では、ハンクは登場せず、語り部的存在だと思っていたシャールという少女が主人公として行動している。1巻のジャケットを見る限り、実は元々シャールが主人公だったのかもしれん。

同時期に連載が始まった『結婚指輪物語』はせいぜい5巻か6巻で終わると思うのだが、こちらは10巻を超えてもおかしくないスケールになってきたな。今後この物語をどう展開させて行くつもりなのだろう。