木多康昭『喧嘩稼業』7巻

喧嘩稼業(7) (ヤングマガジンコミックス)

喧嘩稼業(7) (ヤングマガジンコミックス)

超人や異能や必殺技とは無縁な、地味だがしっかりと面白い漫画『オールラウンダー廻』が完結してしまった今、本作こそが今イチバン面白い格闘漫画・格闘技漫画のひとつであろう。

本作の主人公は『オールラウンダー廻』と同様、肉体的には(鍛えてはいるものの)ごく常識的な日本人である。尻尾もついていないし、空も飛べないし、元気玉も出せない。しかし『オールラウンダー廻』の主人公と本作の主人公には一点、決定的に違う点がある。それは本作の主人公は「ダーティーである」という点だ。古流武術の門外不出の奥義を盗み、毒やドーピングを使おうとし、試合開始前に戦いを仕掛ける。会話で翻弄し、観客に仕込みを入れて合図と共に特定の行動を起こさせ、怪我をしたふりだって普通にする。

強さの定義は違う。違うのだが、本作も紛れもなく傑作である。