
- 作者: 高浜寛
- 出版社/メーカー: リイド社
- 発売日: 2016/01/29
- メディア: Kindle版
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で、その後『凪渡り及びその他の短篇』という作品の表紙に強いインパクトを覚えたことを覚えているのだが、あまりにも絵力が強く、かえって気後れしたので、その時も購入せず。
さらにその後、『トゥー・エスプレッソ』が発売された時は、実際に購入した(あるいは購入しようとした)記憶がうっすらとあるのだが、どこをどう探してもブログには載っていないし、内容も思い出せない。やっぱり買ってないんだろうな。
……ということで、実に10年越しに高浜寛の作品をきちんと読んでみたのだが、まず絵に着目すると、芸大出身らしく、整ったデッサンで違和感等は全然ない。特に、美大や芸大出身者の漫画にありがちな「デッサンは巧いし書き込みも凄いんだけど漫画の絵としては物足りないね」という不満が全然なく、漫画の絵としてしっかりとこなれている。これは元々そうだったのか、それとも漫画家として15年近くのキャリアを重ねてきたからなのかはわからないが、海外コミック(いわゆるアメコミよりはサブカル寄りの奴ね)の明白な影響もありながら、読みやすいし適度にデフォルメされていて、どことなくぬめっとした湿度もあって、凄く魅力的な絵柄だと思う。「一見女性っぽくないけど女性なのかな」と思ったらやっぱり女性だった。高浜寛は「ひろし」ではなく「かん」らしい。
さて内容だが、海外貿易で利益を得る商人が多く現れ始めた明治初期の長崎を舞台に、変わり者の店主がいる「蛮」という道具屋で働くことになった(一見して何の取り柄もない)大人しい少女・美世が、不思議な魅力を持つ人々との付き合いや、店主がパリ万博で仕入れてきた最先端の品々(ミルクチョコレート、ミシン、ドレス、幻灯機……)に触れ、人間的成長を果たす……といったプロットだろうか。明治時代や大正時代の人々の日本文化と西欧文化の「混じり具合」には、極めて格好良いものがあると昔から思っていたのだが、その雰囲気(舶来文化への憧れのようなもの)が凄く良く出ている。
2巻も出ているようなので早速注文。楽しみだ。