
- 作者: 東條チカ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2016/12/10
- メディア: Kindle版
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「まるで幼女か」というほどにか弱い戦士を描いた話でもない。
文字通りの幼女が、文字通りの戦争に参加した様を描いた話である。
とはいえ、いたいけな幼女が戦争で無惨に散る話ではない。
主人公は元々、現実の日本社会の大企業で「サラリーマン」をやっていた。社畜としての使命を全うし、部長にまで上り詰め、人の嫌がるリストラなども進んでやっていたのだが、それで恨みを買って電車のホームで後ろから押されてしまう。そこで賽の河原の一歩手前、神様的な存在と相対することになるのだが、主人公は科学社会・平和な日本・勝ち組大企業サラリーマンの要職と、それなりに恵まれていて神様の必要を感じていないから神様を信じる必要もない……と神様的な存在にのたまうのである。そのため怒りを買って、今の記憶をそのまま残しながら、魔法が蔓延るファンタジー世界の20世紀初頭のドイツ的な国に、守る者もない戦災孤児として生まれ落ち、(主人公が別に欲しがってもいない)魔法の才能を与えることで幼女ながら軍人として人殺しに明け暮れるという過酷な運命を背負わされることになる。そのことで主人公は運命の「ままならなさ」を呪い、人の応分を知ることで、神様を信じるようになりなさい、と。
まさしく幼女戦記。
……という出オチ感満載の設定なのだが、内容がまた実に面白い。
主人公は(不信心者ではあるが)生真面目かつ典型的なサラリーマン的思考で、それなら「サラリーマンとして与えられた職務を全うしたい」という思いと、「軍の中で出世して後方エリートとして一生を送りたい」という思いから、過去のドイツ軍や第二次世界大戦の歴史も紐解きながら大活躍をしてみせる。しかし大活躍をするが故に、軍から重宝され、さらに最前線に送られる……という矛盾。
実はコメディ要素もけっこう強い作品なのである。
漫画版では「顔芸」も拝めます。
追記
アニメ版でも顔芸が拝める。