板垣巴留『BEASTARS』1〜4巻

肉食獣と草食獣が共存する世界。擬人化された獣が同じ言語を話し、同じ世界に生きる。彼らは(肉食獣を含めて)肉を食べることはご法度とされ、もちろん肉食獣が草食獣を殺すことなど重罪。しかし肉食獣に、肉を食べたいという本能は残っている……という、なかなか深みのある世界観で物語は展開する。

舞台は、全寮制のチェリートン学園。高校2年生のハイイロオオカミ・レゴシが主人公である。レゴシは(肉食獣なのに)ナイーブな性格で、演劇部に所属しているのに一切役者をやらず、美術班の照明係という裏方仕事を進んで引き受けている。しかし優しい心を持っているのに必ずしも周囲と上手く馴染めず、「肉食獣のくせに何を考えているかわからない」と誤解されやすい性格でもある。そんな中、レゴシは草食獣の中でも小動物に分類されるドワーフ種のウサギのハルと出会う。レゴシはだんだんハルに惹かれていくが、ハルへの感情が恋なのか肉食獣としての本能(食欲)なのかがわからず悩む……まあそんな感じのアウトラインである。

レゴシだけでなく、ハル、「ビースター(チェリートン学園ナンバー1の称号)」を目指す演劇部のスターであるアカシカのルイ、レゴシと同じハイイロオオカミの雌であるジュノなど、魅力的かつ深みを持った複数のキャラクターの視点で物語が展開し、はっきり言ってめちゃくちゃ面白い。最近ブログ界隈で皆が押すため、かえって辟易して手を出すのを躊躇していたのだが、面白い作品に罪はないということですね。読まなきゃ損、そんな作品。