- 作者: 佐々木ミノル
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主人公はお世辞にも魅力的な人間ではない。積極的に他人から搾取するようなタイプのクズではないのだが、もう、ここまで卑屈で良いのかってぐらい卑屈で、こうなっちゃうと相手がどう出ても本人の耳には入らない。
そして本書を読んでわかったのが、この手の卑屈な人間というのは単に自分に自信がないだけでなく、心のどこかで「自分の理想とは違う何か」を他人や社会のせいにしているという点だ。自分は底辺の人間で、自分が底辺なのは何をしても上手く行かない最低な環境で生活せざるを得ないためであり、自分が最低な環境にいるのは他人や社会の責任である、と考えている。そして他人に強く嫉妬する。しかも嫉妬の対象は、恵まれた環境にいる人だけでなく、恵まれない環境を苦にせず頑張っている人や、恵まれない自分を気にかけてくれる人や、自分の境遇を特に気にせず付き合おうとしてくれる人にも及ぶ。
要するに、「良い人」「頑張る人」も嫉妬の対象なのだ。自分が「良い人」や「頑張る人」になれないのは他人や社会の責任だから、という先程のロジックが繰り返されるからである。
主人公の卑屈なマインドは相当根深く、同級生や妹や社長が何度も言い聞かせて少しずつ改善に向かうのだが、傷口がむき出しになっているようなもので、ちょっとしたこと(本人はちょっとしたことではないと思っている)で容易く傷つき、元の卑屈さ全開の人間に戻るのである。
Amazonがレコメンドしてくるのでたまたま買ったのだが、何というか、目が離せない。どこに向かうのかな。