
- 作者:平庫 ワカ
- 発売日: 2020/01/08
- メディア: Kindle版
以前かる~くググってみたのだが、どうやらWeb漫画であるらしいこと、Twitter経由なのか誰かのブログ経由なのかとにかく単行本ではなくWeb漫画の時点で激しく注目されていたこと、幾つかのブログで激賞されているらしいこと、ぐらいのことだけはわかった。いわゆる「バズった」んだろうな。
ストーリーはこうだ。主人公はいわゆるOLだが、ある日、親友が死んでしまう。しかし突然というほどではなかった。親友は主人公のたった一人の友達で、生きづらいこの世の中を共に生き抜くための戦友で、父親から虐待されていた。彼女は大人になってもついに健全な自己肯定感を身につけることができず、死を選んでしまったのである。主人公は半身が引きちぎられるほど悲しいんだろうな。そして衝動的に「ある行動」を起こす……と。ある行動と言ってもググればすぐ出てくるんだが、わたしは前情報なしで読み進めて「おっ」と思えたので、書くのは控えておこう。
本作は確かな画力と繊細な表現で多くの熱狂的な評価を生み出したが、一方で評価が二分とまでは行かないが、星1つ(★☆☆☆☆)の評価も目立つ。極端だが、要するに「意味がわからない」「尻すぼみ」「作者の言いたいことがわからない」「最後読者に丸投げ」というマイナス評価である。
わたしが思うに、主人公の衝動を理解できるかどうか、なんだろうな。すなわち、行動の意味を100%理解できなくても、主人公の衝動に感情移入できるかどうか。たった一人の親友が死んで、論理的・整合的な行動なんて無いよ、とわたしは思う。
ここから更に個人的な感想を書くが、ただ泣き叫ぶだけの何が悪いのか。たった一人の親友が死ぬというのは、政治家が誠に遺憾ですとコメントを出すような冷静な話ではない。そして尻すぼみなのは、それが衝動だからだと思う。ハリウッドみたく、じわじわと三幕構成で盛り上げて最後ドーン! エイドリアーン! みたいな話ばかりではない。本作のクライマックスの幕開けはオープニングの親友の死で、その後はクライマックスを受けた最後の大立ち回りなのだ。しかし永遠の衝動というものはありえない。最後が尻すぼみだろうが、わたしはマイナス評価を与えたりはしない。そういう作品なのかと思うだけだ。
短編だから綺麗にまとめるべき?
短編の様式美にがんじがらめになっている限り、新しい感動は生まれないとわたしは思う。
もうひとつ言いたい。作者の言いたいこと? 無いよそんなの。これは本作以外の、また漫画以外でも小説や映画などあらゆるジャンルのレビューに共通するが、よく「作者の言いたいことがわからない」といったレビューが散見され、その度わたしはもやっとした気持ちになる。中高の国語の授業かよ。わたしは「言いたいこと」があって描いている漫画家なんて少数派だと思う。おそらく、もやっとした「イメージ」があって、あるいは「面白いものを書きたい」という強い欲望があって、さらには「書きたいネタ」があって、だから書くんだと思う。
閑話休題。改めて書く。この漫画は衝動的な作品だ。衝動そのものだ。論理的・整合的に書かれたものではないかもしれない。上等だ。読む側も衝動に身を任せて味わえば良いと、わたしは思う。