小日向まるこ『塀の中の美容室』

キャッチーな「ネタ」を探していた週刊誌記者(♀)が、取材として、受刑者が髪を切ってくれる刑務所の中の美容室を訪れると、その天井には青空の絵が描かれており……というプロローグ。連作集なのだが、この冒頭部分のエピソードがネットでバズったのかな、それで少し読んだことがあるので興味を持って本書を買ってみた次第。凄く丁寧で、あたたかくて、でも現実の厳しさからも逃げることがない。良い作品だと思った。相当おすすめできる。

原作小説もあるみたい。

塀の中の美容室 (双葉文庫)

塀の中の美容室 (双葉文庫)

  • 作者:桜井美奈
  • 発売日: 2018/11/15
  • メディア: Kindle版

余談

小日向まるこは『アルティストは花を踏まない』という作品もあるが、こちらも大変に優れた漫画である。第一次世界大戦後、ドイツ国境近くのフランスを舞台とした子供たちの物語で、良質な映画を観たような深い余韻が読者を否応なく包み込む。

戦争、受刑者といった難しいモチーフを選んで、上手く漫画に落としているなと感心する。早く次の作品を読みたい。