コトバノリアキ『姫騎士は蛮族の嫁』1巻

「くっころ」という言葉がある。

「くっ、殺せ!」の略で、敵国やモンスターに捕まった女性騎士が、命乞いなどせず気高く振る舞う様である。これが「くっころ」などという略語になるのは、当然この後あっさり殺されることなど皆無で、大抵は敵国やモンスターに懐柔されるか、あるいはエロいことをされて自我が崩壊したりするのが大半だからである。後者の方が多いかもしれないが、いずれにせよこの手のジャンル化というか、お決まりのテンプレ化した展開を、何だろう、揶揄でもないが、皆で面白がっているのが、この「くっころ」である。

本作は、この「くっころ」がテンプレ化されていることを十分に意識しつつ、あえて真正面から描いたらどうなるかって感じで作った少年漫画である(と思う)。主人公は非常に強い女性騎士なのだが、敢えなく蛮族とされる敵国の将に敗退し、連れ去られる。本人としては、拷問されても祖国の情報を吐く気などないからいっそのこと殺せと思っているのだが、敵国は対戦国の女性騎士を捕まえて自分の妻に迎える風習があり、主人公は奴隷や人質どころか妻として処遇され、しかもその結婚相手(将軍)は非常に強く、髭を落とすと意外にイケメンで、性格も良く、周囲もあたたかく自分を迎えてくれ――と、もう笑っちゃうぐらいのテンプレ展開なのだが、わりかしちゃんと面白い。

この面白さが「出オチ」なのか、「普遍性」なのかは正直よくわからない。早く2巻が読みたいなー。