古橋秀之+別天荒人+堀越耕平『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』15巻

『僕のヒーローアカデミア』のスピンオフ、堂々完結!!!!!

これはもう何百回でも言いたいが、本作は漫画史上稀に見る偉業を成し遂げた作品である。

本家ヒロアカをスピンオフが超えてしまったからだ。もちろん極私的な基準に過ぎないけれどね。

絵力、ストーリー、キャラの魅力、主人公やその他主役級キャラへの感情移入……どれを取っても凄すぎる。

  • 本家ヒロアカの主人公・デクが、ワン・フォー・オールのチカラを継承したことでチートスキルを手に入れたのに対して、ヴィジランテの主人公・苦労マンは「滑走」といういささか頼りない自分の個性を、滑走の原理まで立ち返って強化することで様々な能力を発動できるように進化・深化している。
  • 本家ヒロアカが訳のわからない馴れ合いの学園ドラマをやっている間、苦労マンは「趣味」で人助けをする中で仲間を少しずつ増やしてきた。
  • 本家ヒロアカがライバル・どうでも良いクラスメート・ヴィラン1・ヴィラン2・ヴィラン3……と次々と視点を変えてもはや脇役キャラとしか言いようのないキャラのエピソードを長々と描いてストーリーの水増し作業をしている中(これはONE PIECEなど多くの長編漫画がやっていて実に下らない文化だと思う)、ヴィジランテは苦労マン・おっさん・ヒロイン・ヴィランにフォーカスしてコンパクトに話を掘り下げている。
  • 本家ヒロアカのデクが少年漫画のテンプレ的な性格・行動で「なんでルール守れないかな」などとイラッとすることが多い。一方、苦労マンはごく一般的な若者の地続きにあるキャラで、言動にほぼ違和感がなく、感情移入しやすい。

他にも言い出すとキリがない。

ここで誤解されたくないので補足しておくと、わたしはヒロアカが嫌いではない。むしろ大好きだ。何十回も読み返している。

それでも本家ヒロアカには幾つもの欠点や粗があり、ヴィジランテはそれを超えていると思う。

惜しむらくは、ヴィジランテは本家より強いヴィランを出さないという制約を課しているため、その辺がもったいないなぁとは思う。けどこれもリアルっちゃリアルなのかな。

古橋秀之と別天荒人は漫画作りのプロ中のプロだと思う。完結は残念だが、次回作をすぐに読みたい。