稀に、飛び抜けて歌声の美しい男の子が生まれることがある。そんなとき周囲の大人たちは“天使”が生まれたといって大騒ぎをする。もちろんただ歌が上手いだけの少年はいずれ変声期を迎え、他の少年と同様に成長して青年になる。しかし本物の
美しい歌声を持つ少年は、
ある日、ラザロとガブリエルの二人がギムナジウムに入寮する。2人は同級生で同部屋になったが、2人の入寮の動機は全く異なっていた。ラザロは自身が天使であることを信じて「自分の才能を試すために」やってきた。一方、ガブリエルは「家が貧しくお金のために」やってきたのである。ガブリエルの家庭環境を知ったラザロは、ガブリエルに手を抜くことを薦める。天使の歌声に到達しなければ、ガブリエルは生き残れる。そしてそこからガブリエル自身の生き方を見つければ良い。一方、心の底から天使になりたくてギムナジウムに来た自分のことは応援してほしいと。2人は短い時間ながらお互いを理解し合い、親友と言って良い間柄になる。
しかしラザロはこの後、激しく打ちのめされ、ガブリエルに複雑な感情を抱くようになる。ラザロとガブリエルはこれから共同生活を送るクラスメートの少年たちの前で歌声を披露したのだが、ガブリエルの歌声が圧倒的だったからである。天使を目指していないガブリエルの方が、自分よりも豊かな才能を持っている――そんな秘めたる失意のエピソードから、ラザロとガブリエルを含む8人の少年の共同生活が始まる。
本作は、