『白い春』DVD-BOX

白い春DVD-BOX

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  • 出版社/メーカー: 関西テレビ
  • 発売日: 2009/09/02
  • メディア: DVD
暴力団組員・佐倉春男(阿部寛)の恋人は、重い持病を抱えていた。佐倉春男は恋人のためにカタギになって真っ当に生きたいと願うが、そんなに簡単に抜けさせてくれるほどヤクザの道は甘くない。所属する組のボスは、抗争相手の組長を殺してくれば、組を抜けさせ、かつ800万円を彼女に残してやると言う。800万があれば、彼女の病気が重くなっても治療代として十分だ。主人公は悩んだ末、彼女に一方的に別れを告げ、鉄砲玉の道を選ぶ。自分が幸せにしなくとも、800万を残してやれれば彼女が幸せになると信じて。そして殺人の罪で刑務所に収監され、9年の刑期を終えて出てきた佐倉春男は、出所して最初の飯屋でトイレに行っている間に全財産を盗まれ、馴染みの仲間の元へ足を運ぶと彼女が病死していたことを知る。文字通りの踏んだり蹴ったりで自暴自棄になっていた佐倉春男は、ある事実を知る。自分と別れた彼女は、ある男と付き合いだし、その男はパン屋を開店していた。彼女には800万を残していたのに、なぜ病死しているのか。彼女の800万がその男のパン屋の開店資金に消えたのではないか……そんなプロローグ。

本作は大きく3幕構成だと思った。

まず、出所した佐倉春男のひたすら辛い現状。何を恨んで良いかもわからない、やるせなさ。わたしはもうこの時点で、涙をこらえきれなかった。

次に、恋人の最後を看取ったパン屋や、その娘とのエピソード。実はその娘は、佐倉春男の実の娘である。血の繋がった親と、育ての親。非常にデリケートな形で物語が進む。

最後は、最終話で突然暴風のように訪れるエピソード。これはネタバレになるから詳しく書くのは止めておくが、なぜ今更、と思わざるを得ない唐突さで、しかしこれがまた逆にリアルかもしれないと思ったり。現実はそこまでロジカルに展開していくとは限らないからね。

全体を通して、悲しい、そして哀しい物語だとわたしは思った。

しかし面白いね。ところどころのあたたかい要素やコメディ要素も、物語全体が陰湿になり過ぎないようまとめてくれていて、わたしは凄く面白かった。