『ピンポン』@Netflix

松本大洋『ピンポン』のアニメ化。全11話。

松本大洋は思春期の頃に最も惹かれた漫画家のひとりで、とりわけピンポンは彼の作品の中でも最高傑作のひとつだと思っている。とんでもない才能の塊、それを再現することなど不可能――それがピンポンの多くのファンが感じていたことだろう。

その証拠に(というわけでもないが)実写版ピンポンは原作にかすりもしなかった。そりゃそうよ、窪塚洋介ではペコは無理だ。誤解なきように書くと、わたしは窪塚洋介はわりに好きだ。巧いとも思う。しかしペコの動きを通常の芸能人が演じることなど無理だろうし、通常のスポーツ選手ではヒーローを演じることなど無理だ。同様に、スマイル(演 ARATA)もドラゴン(演 中村獅童)も原作にかすることすら出来ていない。

だからわたしは、アニメ版に大して期待せず、だから敢えてリアルタイムで2014年に観ることもせず、購入することもせず、今回たまたまネトフリのリストに入っていたことを発見して、期待せず見てみることにした……のだが、これは想像を良い意味で大きく超えてきた。かする・かすらないの話ではない。原作至上主義者に恨まれたくないのであまり大きなことは断言できないが、少なくとも志は原作に匹敵だ。

  • 原作にはない登場人物・設定・展開がそこそこあるが、どれもハズした感じがなく、愛おしい。後でWikipediaをチェックしたのだが、松本大洋が全面協力して、本人が原作しっぴ中に考えていたが実現できなかったアイデアを多数盛り込んでいるようだ。
  • 音楽がイケてる。こういう方向性で来たか。もうちょっと電子音楽っぽくて声なしの方向を勝手に想像してた。なんだろ、スマイルの「ロボ」って言葉とか、ペコの自堕落ヒーローのチープさとか、そういうイメージが強く刷り込まれてるのかな。
  • 絵柄や動きが、松本大洋の独特の雰囲気をかなりの程度、再現している。もちろん松本大洋のコマ割りやアングルの完全再現は(アニメという性質上)不可能なんだけど、それでも試合展開のスピード感とか、ドラゴンの怖さとか、松本大洋の人物のタッチなどは、相当追い込んでくれたなーって感じがする。

これは観てないと損するタイプのアニメだな。最高。