殊能将之『ハサミ男』

ハサミ男 (講談社文庫)

ハサミ男 (講談社文庫)

主人公は「ハサミ男」と呼ばれ世の中から恐れられている連続殺人犯(シリアルキラー)であり、これまでに女子高生を二人殺し、いたいけな女子高生にハサミを突き立ててきた。今回もある女子高生に狙いをつけて周到に準備し、さあいよいよ3人目の殺人に取りかかろうとしたところ、何と自分が殺そうと考えていた女子高生を直前に別の人間が殺していた(しかもハサミ男と同じ手口で!)。加えて、現場から上手く立ち去ることが出来ず、遺体発見者になってしまう。自分は確かに連続殺人犯だが、自分が殺していない偽ハサミ男の事件で掴まるのは納得できないため、事件を調べ始める……といったプロローグ。
つまり連続殺人犯が探偵役になるという、何とも変わった設定なのである。
本書全体のメイントリックも、(映像やラジオドラマではなく)書籍ならではのトリックで、そう来たかーと思わず唸らされた。Amazonから推薦された本なので有名なのだろうが、なるほど確かに面白い。
これまでは、トリックのわかったミステリを読み返すという趣味は全然なかったけれど、本書を読み終えたとき、どこに伏線があったのかもう1回読み返したいと思ってしまった。ミステリにはこういう楽しみもあるんだなー。