インキュベ日記

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『365日のシンプルライフ』@Prime Video

365日のシンプルライフ(字幕版)

365日のシンプルライフ(字幕版)

  • 発売日: 2014/08/27
  • メディア: Prime Video
ヘルシンキ在住・26歳のペトリは、彼女に振られたことをきっかけにモノに囲まれすぎた生活に幸せを感じられなくなり、ある実験を始める。

Rule 1. 自分の持ちモノすべてを倉庫に預ける
Rule 2. 1日に1個だけ倉庫から持って来る
Rule 3. 1年間、続ける
Rule 4. 1年間、何も買わない

1日目は、何もない部屋から倉庫まで、全裸で雪のヘルシンキを駆け抜ける(新聞紙を拾って股間は隠したけど)。

本当に必要なモノを見極めるシンプルライフの実験――というプロローグ。

日本の断捨離やこんまりメソッドにも通ずる話で、なかなか楽しめた。

なお公式サイトを見たら「監督・脚本・主演:ペトリ・ルーッカイネン」と書いてある。本人が本人役で主演しているのか。しかも実験も自分の家なのかな。ますます興味が出てきた。

www.365simple.net

『恋妻家宮本』@Prime Video

恋妻家宮本

恋妻家宮本

  • 発売日: 2017/07/10
  • メディア: Prime Video
夫(阿部寛)は何事にも優柔不断で物事を決められない。一方、妻(天海祐希)はサバサバして決断力のあるタイプである。性格は違うものの2人は上手く行っていたが、一人息子が結婚して家を出てしまい、2人だけで暮らすようになると、阿部寛はどうも間が持たず、ぎこちない感じになってしまう。しかも、妻側だけ記入された離婚届を発見してしまい、激しく動揺する……というプロローグ。

基本的にコメディタッチになっており、肩の力を抜いて楽しめる佳品である。

敢えて言うと……どうだろう、阿部寛と天海祐希がそれぞれ美男美女すぎて、熟年離婚という感じに見えないことかなあ。天海祐希ほんと可愛い。年齢を感じさせない。

あと、二人の大学時代は別キャストなのだが、女性側が凄く可愛かった。調べたら元ももクロの早見あかりだった。

『陽はまた昇る』@Prime Video

陽はまた昇る

陽はまた昇る

  • 発売日: 2015/08/01
  • メディア: Prime Video
ベータマックスとVHSをめぐる人間ドラマを、VHS側から描いた映画。

西田敏行が良くも悪くも「家族」として従業員を扱い、「夢」として新製品開発をハンドリングしており、和風というか、古風というか、浪花節というか。

なお、こう書くとわたしが本作を批判的に捉えているように思われるかもしれないが、そうではない。わたしは家族経営は21世紀においても有効だと思う。21世紀における多くの企業が、社内活性化施策としてコミュニケーション促進を掲げ、飲み会を始めとした社内交流イベントをやっている。転職を引き止める要素は、給与や仕事内容以上に人間関係が重要だとも聞く。ドライなだけの職場に、1日8時間(通勤時間と間の休憩時間を含めると、残業時間なしでも約11時間)を費やすのは辛いということなのだと思う。

『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』シーズン8@Prime Video、『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル Documentary of Documental』@Prime Video

ドキュメンタルのシーズン8は、ただただ駄作。コメントのしようがない。

一方、過激な下ネタ表現が問題となりAmazonの怒りを買い、お蔵入りになってしまった幻のドキュメンタルを「ドキュメンタリー」として放送した本作はめちゃくちゃ面白かった。

特に、とろサーモン久保田が良いね。

笑いとコンプライアンスの関係を考えさせられる。

とろサーモン久保田はさっさと復活してほしい。

菊澤研宗『成功する日本企業には「共通の本質」がある 「ダイナミック・ケイパビリティ」の経営学』

経営学のビッグ・アイディア(大胆で革新的な考え)は現在、次の4つなのだそうだ。

  1. 野中郁次郎教授が展開した「ナレッジ・マネジメント」研究(企業がどのようにして新しい知識(ナレッジ)を創造し、いかにして生み出した知識を効率的に活用する(マネジメントする)のかをテーマとする研究)
  2. クレイトン・クリステンセン教授が展開した「イノベーションのジレンマ」研究(優良企業が陥りやすい失敗をいかにして解決するかをテーマとする研究)
  3. ヘンリー・チェスブロー教授が展開した「オープン・イノベーション」研究(社外の知識を可能なかぎり利用し、オープンに研究開発を展開する方法をテーマとする研究)
  4. デイビッド・ティース教授が展開している「ダイナミック・ケイパビリティ」研究

このうちダイナミック・ケイパビリティのみ、まだ日本では十分に知られていないが、この考え方は成功した日本企業の本質を特徴づけているものであるそうだ。

本題に入ると、まず企業のケイパビリティ(能力)には2つの能力がある。

  1. オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)
  2. ダイナミック・ケイパビリティ(変化対応的な自己変革能力)

ややわかりづらいが、ビジネス環境が安定しているときに企業内の資産や資源を効率的に扱う企業の通常能力が「オーディナリー・ケイパビリティ」と呼ばれる。一方、ビジネス環境が不安定なときに「企業が環境の変化を感知し、そこに新ビジネスの機会を見出し、そして既存の知識、人財、資産(一般的資産)およびオーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)を再構成・再配置・再編成する能力」が「ダイナミック・ケイパビリティ」なのだそうだ。

詳細は本書を読んでもらうとして、ひとつ感心したのが、章立てや各章の説明が非常に筋肉質で、言い回しにも無駄なところがなく、とてもわかりやすいことだ。

琴坂将広『経営戦略原論』

経営戦略原論

経営戦略原論

んー、よくまとまっているとは思うが、原論という感じではない。

前半で経営戦略の理論的歴史を追っていった後、後半で理論と実践の間について検討するみたいな感じ。

原論という言葉に弱いので、ちょっと期待しすぎたかも。繰り返すが、よくまとまっているとは思う。

カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』

キャシーという名の女性が、自分の少女時代を回想するという建て付けの小説。

ブッカー賞の最終候補にもなったカズオ・イシグロの代表作なので、読んだことがある人は多いかもしれない。わたしは前情報ゼロで読み進めた。

キャシーはヘールシャムという寄宿学校のようなところで生まれ育っている。孤児院のようなものかも。でもはっきりとはわからない。親はおらず、寮のようなところで多くの子供が一緒に生活している。舞台がどこか、時代がいつかもわからない。カセットテープが出てくることから、1970年代〜1980年代あたりのイギリス(カズオ・イシグロがイギリス人なので)の片田舎なのかなと漠然と想像したりした。しかしキャシーの語りからは「交換会」「介護人」「保護官」といった独特のワードが出てくる。それらに付随する独特の慣習も。もしかしたら、新興宗教が作った閉鎖的なコミュニティなのかもしれない。アメリカなんかにも幾つかあるって言うね。

その想像が当たっているか?

けっこう知られているようだが、ネタばらしはやめておこう。一応補足しておくと、中盤に差し掛かったあたりで情報量がぐんと増えて、おぼろげながらキャシーたちの置かれた状況が何となくわかってくる。

何とも言えない。

読みながら幾つか感じたことがある。まず、これは原文だけでなく翻訳者の功績でもあると思うが、平易でとても読みやすく、しかも静かで美しい、抑制された文体だということ。わたしが個人的にとても好きな文体だ。

もうひとつ、過去のことを語っているからというのもあるが、本人の体験談なのにも関わらず、ちょいちょい、はっきりとは覚えてないんですが……とか、いま思うと……とか、確か……といった不明瞭な語りが出てくる。ミステリでたまに出てくる「信頼できない語り手」が自分自身って奴なのかな、比較的新しい小説技法上の試みなのかも、とか思いながら引き続き読み進める。

クライマックス。厳密なミステリというわけではないものの謎の多い小説なので、あまり具体的な話はしないが、それでもクライマックスと呼べるシーンがある。わたしは読みながら、物凄く感情を揺さぶられた。

揺さぶられる……他にどう言えば良いだろう?

ずいぶん手に取るのが遅くなってしまった。これは多くの人間が読むべき小説だ。

補足

巻末では柴田元幸が解説を加えているが、カズオ・イシグロは「記憶は捏造する」「運命は不可避である」といった中心的テーマで繰り返し創作しているそうだ。本作に捏造というべきものがあったかどうかはよくわからなかったが、上で書いた「信頼できない語り手」という感想も、あながち外しているわけではなさそうだ。