インキュベ日記

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白樺鹿夜『北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし』1〜5巻

厳しい寒さの辺境を領地とするため一向に結婚相手が見つからない伯爵と、優秀な結婚時期を逃した女性軍人が、1年間「仮夫婦」として北国でスローライフするという設定の漫画。

作品名や醸し出す雰囲気は完全に「なろう系」だが、別に転生もしないし、魔物も魔法もチートスキルも登場しない。そもそもこの「醸し出す雰囲気」って奴が何なのか考えてみたのだが、スローライフ自体に「なろう感」があるんだよね。従前のファンタジー作品は、その世界観に基づいて多かれ少なかれ乗り越えるべき何かしらの問題があったわけだが、本作の場合、そもそも乗り越えるべき問題がほとんどない。仮夫婦と言っても、わざわざ北国の辺境に来て厳しい自給自足の暮らしを続けているのは、お互い憎からず思っているわけで、つまり「どうせ結婚するんだろ」という予定調和の中で2人に育まれる恋心を暖かく見守るという構図が、正直「なろう系」に似てるんだよね。

あ、批判めいたことを書いたように見えるかもしれないけど、作品自体は悪くないと思う。物語の起伏は全然ないが、それで良い人には面白いと思う。

田素弘『紛争でしたら八田まで』4巻

フリーの地政学リスクコンサルタントとして、紛争に発展しかねない民族間・人種間・地域間などのトラブルを解決する主人公・八田百合を主人公とした作品。『MASTERキートン』や『パイナップルARMY』に近いが、もっと今っぽさがある。

今回はインド編の続きとアイスランド編なのだが、アイスランドは昔から個人的に気になる国だったので、取り上げてくれて嬉しい。そういえばアイスランドを舞台とした漫画『北北西に曇と往け』の続きどうなったんだろうな……と思って調べたら発売されてた。

北北西に曇と往け 5巻 (HARTA COMIX)

北北西に曇と往け 5巻 (HARTA COMIX)

三菱UFJ信託銀行不動産コンサルティング部『図解 不動産証券化とJ-REITがわかる本』

不動産金融ビジネスに係る入門書。

以下の3冊をセットで読んだので、感想は3冊まとめて書きたいのだが、どれが一番良いかと問われるとけっこう難しい。どれも一長一短というか。

  • 田淵直也『入門 J-REITと不動産金融ビジネスのしくみ』(以下、田淵本)
  • 脇本和也『講義形式でわかりやすい不動産ファンドの教科書』(以下、脇本本)
  • 三菱UFJ信託銀行不動産コンサルティング部『図解 不動産証券化とJ-REITがわかる本』(以下、三菱本)

まず不動産金融ビジネスを最も広く捉えているのは、田淵本だと思った。そもそも「不動産金融ビジネス」というとき、本来金融商品でない不動産を金融商品として組成・流通させるために「証券化」することを指すが、この証券化商品の収益の源泉(これはあくまでわたしの感覚的な理解の言葉で、専門的には原資産や裏付資産というらしい)は当然、普通は不動産そのもの、もっと言うと賃料収入や売買損益がベースになる。これがいわゆる不動産ファンドなわけである。

一方、不動産を担保とする貸出債権(抵当権付貸出債権/モーゲージ)を裏づけにして発行される債券型の証券化商品をMBS(Mortgage Backed Securities)と呼び、これも極めて重要な不動産金融ビジネスなのだが、田淵本以外では書かれていない。脇本本と三菱本はあくまで不動産ファンドに限定した本である。不動産ファンドについてだけ知りたいのであれば脇本本か三菱本で良いのだが、MBSについても知りたければ田淵本を手に取ることが必要だ。

なお田淵本では、裏付資産と対象不動産で区分している。わたしなりに少し文言を変えて整理すると以下のようになる。

裏付資産(収益の源泉) 対象不動産 主な証券化の形態
不動産担保貸付証券(モーゲージ) 居住用不動産 機構RMBS・民間RMBS
不動産担保貸付証券(モーゲージ) 商業用不動産 CMBS
不動産そのもの(賃料収入・売買損益) 商業用不動産 不動産ファンド
不動産そのもの(賃料収入・売買損益) (不動産開発) 開発型不動産ファンド

いきなり実務的な内容が書かれているだけでなく、この手のメタな分類がある方が、わたしは好きだ。

それなら田淵本だけ読めば良いかと問われるとこれがまた難しく、田淵本は不動産金融ビジネスの各プレーヤーに対する記述がほとんどない。もちろんスキーム図はあるのだが、いきなり複雑なスキーム図がドンと出てくる割に細かな解説は少ない。例えば、オリジネーター(証券化不動産の当初所有者)はなぜ不動産を証券化したいのか? このスキームにおけるテナントや資産運用会社の役割は? そういった記述は、脇本本(著者の脇本和也は三井住友信託銀行の方である)や三菱本の方が100倍しっかり書いてある。特に脇本本は、ビジネス以前のそもそもの不動産ビジネスについてしっかり記述しているのも良い。それでも総合的な記載の分厚さとか網羅性で言うと、やはり三菱本になるのかなあ。分量は多いけれども、各プレイヤーの動機(なぜ不動産証券化ビジネスに関与したいのか)や役割が明確に記載されていて、しっかり読むとしっかり理解できる。

設例:不動産ファンドの超ざっくりとしたお金の流れ

不動産ファンドについては自分なりに数値を置いてお金の流れを整理した。本当はホワイトボードやノートに書いた図もアップするとわかりやすいんだけど。

  • ある商業施設があり、それを証券化スキームで小口化し、それを20人の投資家 × 証券化商品1つ10億円 = 200億円の物件譲渡価格でSPCが買い取ったとする。
  • SPCはこの商業施設を運営していくわけだが、テナント区画は100件あり、単純化するためにテナント料は全て100万円とする。すると毎月100万円のテナント料 × 100件 × 12ヶ月 = 年間12億円の賃料収入が毎月発生。不動産の維持管理コストが年間2億円だとすると、投資家に配当されるお金は10億円である。投資家は20人いるので、10億円 / 20人 = 0.5億円が投資家あたりの年間配当額となる。
  • 不動産ファンドは、物件の入れ替えを前提とした永続的なものもあるが、一旦このファンドの運用期間は10年間と仮置きする。10年間だと、0.5億円 × 10年間 = 5億円が得られる賃料収入の合計である。
  • さて10年経ったので、この商業施設を他のファンドに転売して精算し、預り金を投資家に返却したい。この商業施設への客足は順調で、今後も安定して賃料収入が見込めるため、取得価格と同額の200億円で売却できたと仮定すると、200億円 / 20名 = 投資家あたり10億円を、投資家に戻すことになる。
  • これらの結果、各投資家は、10億円の出資に対して、10年間で5億円 + 10億円 = 15億円の収益が得られる。10年間で利回50%だから、単純平均で年間5%かな。

上記は概念的なもので、そもそも各数値はわたしが現場を知らずテキトーに置いたものだし、重要なコストやリスクが入っていない。

大きなコストとしては、まず、物件の取得や売却には様々な手続きが必要で、そのコストが上記には入っていない。次に物件の維持を年間2億円と置いているが、おそらく数年に1回大きな修繕が発生するはずだがその費用も計上されていない。またリスクとして、テナントが常に埋まっているとは限らないし、客足が伸びなければ賃料の値下げリスクもある(逆に客足が伸びれば賃料の値上げ交渉が可能かもしれない)し、精算時に取得価格よりも低い金額でしか売却できないかもしれない。また投資家からの出資金額だけでなく、金融機関からの借入も利用する可能性があるため、そうすると金融機関への利息の返済も必要である。

脇本和也『講義形式でわかりやすい不動産ファンドの教科書』

不動産金融ビジネスに係る入門書。昨日も書いたとおり、今この手の本を3冊まとめて読んでいるので、感想は3冊まとめて1/16の感想で書きたい。

田淵直也『入門 J-REITと不動産金融ビジネスのしくみ』

入門J-REITと不動産金融ビジネスのしくみ

入門J-REITと不動産金融ビジネスのしくみ

不動産金融ビジネスに係る入門書。今この手の本を3冊まとめて読んでいるので、感想は3冊まとめて1/16の感想で書きたい。

浜田咲良『金曜日はアトリエで』1〜2巻

日々の生活に疲れきったヒロイン(環)が、画家(石原春水)に声をかけられてヌードモデルをすることになるのだが(画家は女性の裸体と魚を対置して絵を描くスタイルなので)、ただ疲れ切っているだけのヒロインの様子がミステリアスに映ったのか、画家がヒロインに恋心を抱くという、奇妙なラブコメ。説明すると「へー」ぐらいの感想しかないが、いざ読んでみるとけっこう面白かったりする。ハルタらしいかも。

井上純哉『怪獣自衛隊』1〜2巻

突如、深海から100メートルを超える巨大な怪獣が現れて人間を襲うという設定の漫画。

でもB級パニック映画や特撮映画のノリではなく、シン・ゴジラのそれに近い。シン・ゴジラと違うのは、シン・ゴジラはあくまで日本政府というか組織として怪獣と対峙したのだが、本作では日本政府や軍が現状ほとんど機能しておらず、たまたま怪獣に襲われる船に乗り込んでいた任官待ちの自衛官候補生(女性)が、機転を利かせて怪獣の恐怖に立ち向かうという構図である。

怪獣の設定とか安易だなと思ってしまうのだが、けっこう面白くて、続きが気になる。