- 作者: 機本伸司
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2016/03/11
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
天才女子高生・穂瑞沙羅華と凡庸な主人公の活躍を描く『神様のパズル』の続編となる「穂瑞沙羅華の課外活動」シリーズである。課外活動シリーズとしては、『パズルの軌跡』『究極のドグマ』『彼女の狂詩曲』に続く第四弾。けっこう長く続いてきたなあ。
まず出世作『神様のパズル』では、物理学を手がかりに「宇宙を人工的に作ることは出来るか」というテーマでSFを展開した。その後、課外活動シリーズ第一作『パズルの軌跡』では、脳科学を手がかりに「幸福を人工的に作ることは出来るか」というテーマでSFを展開した。次に第二作『究極のドグマ』では、生命科学を手がかりに「天才児を人工的に作ることは出来るか」というテーマでSFを展開した。それから第三作『彼女の狂詩曲』では一言で書き表せない重層的なプロットになったのだが、敢えて書くならば「未知の素粒子発見を目指して建造された巨大加速器“むげん”の事業仕分けを回避することは出来るか」というテーマというかストーリーであった。
最後に第四弾『恋するタイムマシン』では、タイトルの通り「タイムマシンを人工的に作ることは出来るか」というテーマでSFを展開している。ただしヒロイン・穂瑞沙羅華の葛藤はそこまでではなかったかな。凡庸な研究者が「研究と彼女のどちらを取るか」という凡庸なテーマに取り組んでしまったために、天才の葛藤が埋もれてしまった形になる。久々に穂瑞沙羅華の活躍が読めて面白かったが、そろそろ物語を次のステージに進めて良いのかもしれない。
なお本作の「あとがき」がけっこう興味深かった。SF的なモチーフばかり気にしていたのでこれまで全く気づかなかったのだが、そういうテーマ設定があったのか!
主人公の穂瑞沙羅華を中心に、これまで「自己愛」「動物愛」「家族愛」と続けてきた課外活動も、今回は「恋愛」がテーマです。
余談
巻末の解説は眉村卓。しかしとにかく不愉快になる解説?だった。真面目に作品を読んでおらず、何の意味があるのか全くわからない(解説者本人すら蛇足と書いている)思い出話がスペースの多くを占める。しかも「こんな若造の作品を素直に褒めたくない」という下らないプライドがプンプン臭ってきて、何でこんなのを解説に選んだかなーと。こういうのが政治って奴なのかな。