鈴木祐『最強のコミュ力のつくりかた』

出たら大抵買っているし読んでいるお気に入りのライター。10万本以上の科学論文を読み、600人を超える海外の学者や専門医師へのインタビューをしているそうで、その知見や調査結果をブログで発信したり、本にしたり、商品開発したり、という「思いっきり勉強ができたら食えるようになるのか?」を地で行く、半端じゃない方である。

本書の内容だが、冒頭からめちゃくちゃ尖っているし、突きつけられる。

 あなたの言葉が伝わらないのは、
 あなたに人としての "魅力" が欠けているからである――。

 これが、本書の大きな結論です。「もっとうまく話したい」「言いたいことを表現できない」「自分の気持ちを伝えられない」といった、コミュニケーションにおける定番の悩みは、すべてあなたの "魅力" のなさに帰着します。
 もちろん、読者の皆さんを怒らせたいわけではありませんし、あなたに人としての魅力がないと言いたいわけでもありません。
 強調したいのは、 "魅力" という要素を基礎に置かない限り、どんなテクニックを使っても、私たちのコミュニケーションは改善されないという事実です。

 ●伝えたい内容をよどみなく語る話術。
 ●メッセージをわかりやすく伝える表現力。
 ●当意即妙に笑いを起こすユーモア力。
 ●自信に満ちたボディランゲージ。

 これらのスキルが無駄だとは言わないものの、人間的な魅力を備えた人物のコミュニケーションには敵いません。いかに巧みな話術を使おうが、論理的に主張を伝えようが、人としての魅力がなければ、どんな言葉も相手には響かないからです。

めちゃくちゃ身も蓋もない話である。

しかし真実だ。

著者の言う通り、ここから出発する以外に道はないのだと思う。

ここで重要かつ救いなのは、ここでの魅力は、一定コントロール・演出できるという点だ。

著者は、どの文化圏における調査でも確認された要素で、人としての魅力を下げてしまう3つの要素を挙げている。

  1. 嘘が多い=コミュニケーションの手段に一貫性がなく、周囲から「嘘が多い」とみなされてしまう状態です。相手に合わせて態度を変える人に多い問題で、「気持ちがよくわからない」「何かを隠している」などと見られやすい傾向があります。
  2. 感情が幼い=感情のコントロールに難があり、心の余裕、精神の安定、メンタルの強靭さなどが足りない状態を指します。友人からは「いつも緊張している」「空気を読まない」「テンションがおかしい」などと思われやすいタイプです。
  3. 性格が悪い=優しさ、親切さ、共感力などの印象が少ない状態です。当然、まわりからは「嫌なやつ」と思われやすく、本当は情け深い性格だったとしても、周囲からは「冷たい人間」「いつも偉そう」と言われます。

例えば嘘が多い人というのは、単に虚言癖という話ばかりを指すのではない。自己開示に乏しく本音を言わない人や、本音と違うのに相手に同調してしまう人、本当は楽しくないのに楽しいふりをしてしまう人、なども含まれる。また感情が幼い人というのは、緊張しやすい人、すぐ落ち込んだりする人、なども含まれる。自身の感情を自身でコントロールできていないからだ。個人的には「感情が幼い」などは身につまされる。わたしも短気な方で、かなり気をつけているものの、本当に他人のことは言えない状態だからだ。

ただし本書は、こうした問題を解決する、乗り越えるためのワークをしっかり準備している。これらに取り組むことで、一定、人としての魅力は上がる(上がったように見える)と言って良いだろうと思う。様々な場所で既に話題になっているため、読んでいる方も多いと思うが、わたしごときが改めて空気を読まずに言ってしまおう。おすすめである。