石黒正数『木曜日のフルット』6巻

木曜日のフルット(6) (少年チャンピオン・コミックス)

木曜日のフルット(6) (少年チャンピオン・コミックス)

「半ノラネコ」のフルットと「半飼い主」の鯨井早菜を中心とした日常系ショートショート。1回2ページなのだが相変わらずの面白さで、言うことなしだね。この作品はこのまま10巻ぐらいまでは続けてほしいなあ。

飯島しんごう『怪談イズデッド ライジング』1巻

怪談イズデッド ライジング(1) (アフタヌーンコミックス)

怪談イズデッド ライジング(1) (アフタヌーンコミックス)

飯島しんごうという人は、「オカルトとエロ(あるいはオカルトと下ネタ)を一緒くたにすること」の破壊力に気づき、『怪談イズデッド』というシモいギャグ漫画を描いているのだが、当該作品からのスピンオフ漫画と言える本作は、エロがない。何となく『聖☆おにいさん』っぽかった。

めいびい『かつて神だった獣たちへ』5巻

かつて神だった獣たちへ(5) (週刊少年マガジンコミックス)

かつて神だった獣たちへ(5) (週刊少年マガジンコミックス)

敵味方が色んな具合に混ざり合って、混沌としてきた。

このまま「ごちゃっ」とした感じで行くのかな。

面白いのは事実だが、なかなか先が見えないなー。

山田芳裕『へうげもの』15〜23巻

どうしても「武」よりも「美」や「数奇」に心惹かれる武将・古田織部(古田左介)が、武と数奇の狭間で自分なりの数奇道を追いかけていく一代記……と説明すれば、それなりに適切に伝わるだろう。

千利休が斬首されたのを機に(長くなりすぎたこともあって)しばらく作品世界から離れていたが、久々に1巻から読み返してみると……嗚呼、改めて凄いとしか言いようがない。古田織部は、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康と歴史に名を残す大大名に仕え、千利休などと並んで戦国時代を代表する数奇者と言っても良い。しかし織部は、甲乙丙丁の中でも最上位で隙のない「甲」ではなく、完璧ではないけれども味わいのある「乙」なものに惹かれてしまう。当世風の言葉で言えば「B級」である。そしてどんな人をも一笑に誘う「ひょうげた」作品を求めて邁進するのである。

色々と本やネットで調べてみると、古田織部は日本で(もしかしたら世界で)初めての前衛芸術の理解者・推進者であるとも言え、「訳はわからないがとにかく面白い」というものを追求した大家であると言えよう。

なお23巻の時点ではもう、大坂夏の陣まで来ている。史実では、もうすぐ古田織部は徳川家康に切腹を命じられ、一言も弁解することもなく腹を切って死を遂げることになる。物語の終わりは……哀しい終わりはもうすぐである。いや、山田芳裕のこと、しみったれた一生の終わりではなく、一笑の終わりを見せてくれるに違いない。

刮目して待て!

平本アキラ『監獄学園』24巻

監獄学園(24) (ヤングマガジンコミックス)

監獄学園(24) (ヤングマガジンコミックス)

ここまで「内容がありそうで、全然ない」というストーリーを続けられるのは凄い。

ギャグ要素ゼロの『俺と悪魔のブルーズ』を描き、そして続き物の本作を描き始めたことで、平本アキラはギャグではなくストーリー漫画を描きたいのかなと思った時期もある。しかし今なら自信を持って言える。監獄学園はそもそも『アゴゲン』以上にブッ飛んだギャグ漫画だと。

海野つなみ『逃げるは恥だが役に立つ』9巻

逃げるは恥だが役に立つ(9) (Kissコミックス)

逃げるは恥だが役に立つ(9) (Kissコミックス)

大学院まで行きながらも就職に失敗した主人公(女)が、何とかして手に入れた「家事手伝い」の仕事を死守するために、雇い主と結婚したふり(偽装結婚)をするという、なかなかひねった設定の人気コミックス。

少し前にテレビドラマ化もされたのだが、けっこうアッサリ目に9巻で完結。

人気もあったみたいなんだが、あまり引きずらない方が良いと判断したのかな。

長田悠幸+町田一八『シオリエクスペリエンス ジミなわたしとヘンなおじさん』1〜8巻

SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 1巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)

SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 1巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)

SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 2巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス) SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 3巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス) SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 4巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス) SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 5巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス) SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 6巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス) SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 7巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス) SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 8巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)
地味なだけの高校教師(女)が、「27歳までに伝説を残さなければ死んでしまう」という呪いというか契約というかを結んでしまい、はみ出しものの教え子たちと「伝説」を作るためのバンドを組む……というアウトラインの漫画。都合良く「伝説」なんて作れないよねという現実味と、それでもその瞬間ではけっこう周囲の人たちの時間を奪っちゃったりして、その何とも言えない描写が凄く刺さる。音楽漫画のカタルシスは、ハマるとやっぱり凄い。

なおクロスロード(十字路)で音楽の神様(悪魔)と契約を結ぶというモチーフはけっこう有名なようで、平本アキラ『俺と悪魔のブルーズ』などでも使われている。本作の主人公は、かのジミ・ヘンドリックスと契約を結んでいる。

浜田よしかづ『つぐもも』19巻

つぐもも : 19 (アクションコミックス)

つぐもも : 19 (アクションコミックス)

「こわい」と「えろい」は同じ穴のムジナ……一言で書けばそんな漫画。

長い年月を経て古くなった器物などに魂や精霊が宿った存在を付喪神(つくもがみ)と呼ぶが、そうした九十九髪は、人から人へ受け継がれ、長い時を経た道具から生まれる「つぐもも」と、呪詛(すそ)と呼ばれる現世の理をねじ曲げる成分や持ち主の強い願望から、ごく短い期間で生まれる「あまそぎ」に大別される……というオカルト風味の漫画なのだが、作者が「女の子の登場人物を全て脱がす」という謎の情熱を持っており、一番の見所はオカルトではなくエロである。

ただし19巻は「つなぎ」の巻と言うべきか、バトルシーンが大半を占める。

本来はバトルシーンこそが本領で、エロがつなぎなんだけどね。

南勝久『ザ・ファブル』1〜9巻

伝説レベルの殺し屋が、1年間「休業」して、大阪で身を潜めることになる。しかし根っからの殺し屋なのであまり常識がないし、身を隠すところもヤクザが斡旋した家なので、まあちょいちょい面倒ごとに巻き込まれてしまう、という設定というかストーリーライン。

独特の世界観と言うか笑いのセンスで、けっこう面白い。

片岡人生『リヴィングストン』1巻

リヴィングストン(1) (モーニングコミックス)

リヴィングストン(1) (モーニングコミックス)

Kindle版が無料だったので購入。

現世でその運命を全うした魂は来世へとつながれ成長を続ける。だが、中には予定外に死亡し、運命どおりにいかず、石となり砕け散ってしまう魂もある。それを防ぎ魂を適切に管理することが、桜井と天野の仕事である。魂が消えゆく危機にある時、2人は現れる。

とりあえずWikipediaを丸パクリしてしまったが、要は予定外に死亡する人間の元へ行き、魂を適切に導くというのが主人公たちの「仕事」である。導くというのがまた微妙な表現で、必ずしも彼らをを生かすということにはならないのだが……まあこの辺りはあまり詳しく書くとネタバレになるので、この辺でやめておく。独特のシュールな雰囲気なので、好きな人は好きだろう。

菅森コウ『駄能力JK成毛川さん』2巻

駄能力JK成毛川さん(2) (ビッグコミックススペシャル)

駄能力JK成毛川さん(2) (ビッグコミックススペシャル)

「ちんげちらし」だの「リモコン隠し」だのといった駄能力妖怪が人間社会に溶け込んで暮らしているという設定のコメディ漫画。1巻もかなり笑ったが、2巻も相変わらず下らなさすぎて面白い。

なお本作は「やわらかスピリッツ」という小学館のウェブで連載されている作品である。1巻発売時は、そこそこ単行本が売れたことを確認してから連載が再開したのだが、既に2巻に収録されていない回が掲載されているから、3巻までは発売してくれるのかもしれない。たのしみ。

三部けい『僕だけがいない街』9巻

僕だけがいない街(9)<僕だけがいない街> (角川コミックス・エース)

僕だけがいない街(9)<僕だけがいない街> (角川コミックス・エース)

8巻で完結したのだが、外伝的な位置づけの9巻も出ていたので購入。

8巻までのようなスリルはなかったが、これはこれで。

なかなか面白い作品だった。

堀越耕平『僕のヒーローアカデミア』12巻

僕のヒーローアカデミア 12 (ジャンプコミックスDIGITAL)

僕のヒーローアカデミア 12 (ジャンプコミックスDIGITAL)

バトル漫画の王道というか、少年ジャンプ漫画の王道。

少年ジャンプで連載されるバトル漫画は、雑誌の方針なんだろうけど、どうしても「強さのインフレ」を起こしてしまう。これはもうアンケート重視ということで、1週たりとも気を抜く展開を作らせないという構造的に起こってしまう宿痾のようなもので、この構造を打破するには今のところ、「相性」か「制約」の要素をつけるぐらいしか解決策はないように思う。相性というのは、例えばハンターハンターやジョジョのように、能力同士の相性が出るようにして、この相性を考えながら戦略を組み立てるというもの。もうひとつの相性は、例えば夜にしか本領を発揮できない狼男とか、3分間しか戦えないウルトラマンを考えてもらうとわかりやすい。

さて、本作および本作の主人公は、相性と制約、両方持っている。まずヒーローが持つ「個性」というものが相性や特性を重視したギミックだし、主人公の少年は「骨がバキバキに折れるから全力を出せない」とか「自分の能力の出所を誰にも知られてはならない」などの制約がある。

それでいて主人公は高校生で、成長要素や仲間要素もふんだんにある。

巧い設定だ。

川田『火ノ丸相撲』13巻

火ノ丸相撲 13 (ジャンプコミックスDIGITAL)

火ノ丸相撲 13 (ジャンプコミックスDIGITAL)

んー、12巻ぐらいから、どうにも「強さのインフレ構造」が気になってきたなあ。

これはジャンプの宿痾とも言うべきもので、ジャンプで広義の「バトル漫画」をやると、スポーツものであろうが格闘技ものであろうがファンタジーものであろうが、必ずと言って良いほどそうなってしまう。相手は高校生のくせに、もう朝青龍も白鵬も勝てないよねこれじゃ。

須藤佑実『ミッドナイトブルー』

ミッドナイトブルー (FEEL COMICS)

ミッドナイトブルー (FEEL COMICS)

完全なジャケ買い。

表紙と内容から想像できる、ちょっとビターな思春期モノという点では確かにその通り。

でもこの人は巧いな。

短篇じゃなくて、もう少し長い作品を描いてほしい。『流寓の姉弟』という作品も出しているから、買ってみよう。