ポール・ストラザーン『90分でわかるニーチェ』

90分でわかる哲学者シリーズの第2弾。

ニーチェは最も有名な哲学者の1人だけれど、よく考えてみると名前が一人歩きしているというか、「神は死んだ」なんて言葉は知っていても、どんなことを考えた哲学者なのか、俺はあまり知らなかった。以前も書いたが、もちろん90分でニーチェ哲学の全貌がわかるはずはない。そんな大それたことを期待するのは筋違いだ。だが90分でも、ニーチェの生涯と、ニーチェの生活とニーチェ哲学の結びつきは、少しは理解することもできるだろう。

例えば、美文家として知られたニーチェの書物はアフォリズム(簡潔かつ明晰な短い言葉を畳みかけるように並べる)形式で書かれているのだが、それはどうも彼の生活スタイルが大きく関係しているらしい。というのは、彼は散歩が好きで毎日のように長時間の散歩を楽しみ、その時に色々なことを思いついていたそうなのだ。散歩の途中に長々とした文を書くことはできないので、メモ程度の短文にならざるを得ない。それがアフォリズムで書かれることになった1つの要因となっているそうだ。

また彼は売春宿で梅毒をもらっている。当時は梅毒と言えば不治の病であり、しかも彼は元から病気持ちであったので、梅毒や他の病気による苦痛が相当ひどかったらしい。それの苦痛が絶え間なく襲ってくるために、長々とした文章が書けずにアフォリズムで書いた――という事情もあるそうだ。文章形式1つにも裏話がある、ということだ。